おはなし。 2008/11/04_Tue_02:29

一期を見てから書こうと思っていたのに見ている暇がありませんでした。
なので二期ネタ。

さたさんが頼んでいた本を無事手に入れてくれたらしいです。うれしい～！楽しみ～！ありがとうございます！
なにもお礼はできませんが…。
毎日妄想を吐きだすくらいしかできませんが…。
アロウズの本にゲストしてください、と言われましたが、だったらグラハムの面白い本を作りましょうよ、と言いたい（笑）

酷い眠気に襲われて、机に向かったまま夢を見る。
見るのは決まって昔の夢だ。
まだ、きみが元気で僕のそばにいた頃の夢。
きみは僕に対して好きだ、とか愛しているとか、そんな陳腐なせりふを使ったことはなかったように思う。けれど、夢の中で会うきみはいつも僕に優しく囁いてくれる。永遠に続く愛の気持ちを。
（たぶん…それは僕の願望だ…）
夢から覚めるとすぐに気持ちまで覚めることが分かっているのに、夢の中の僕はいつもきみに、きみの気持ちに頼り切っている。

 

 

「カタギリ、こんなところで寝ていると風邪をひくぞ」
意識の遠くで声をかけられて、ゆっくりと身体を起こす。きみの姿を見て
（ああ、これは夢だ…）
と思う。
どこまで冷静で、どこまで冷静でないのか、その境界線があいまいになるのは、夢を見ているからこそだろう。
僕は身体を起こして彼がそばにいる事を確かめる。確かめてから、また机に突っ伏した。この夢は懐かしい匂いがする。ユニオンの研究所のにおいだ。
薄く開いた視界にいつも着ていた白衣の袖が見える。薄汚れたその白衣の袖には見覚えがある。
「カタギリ、」
呼びかけるきみの声が、だんだん苛立ちの色を含んでくる。呼びかけている声に気付かないはずがない、ときみは考えているからだ。意地悪をしたくてそのまま寝たふりを続けていると、頭の上にふわりと何かが乗った感触がした。
「起きないのか、カタギリ」
尚も呼びかける声に無視を決め込んでいると、彼の手が乱暴に動いた。ぐしゃぐしゃと髪の毛をかきまぜたらきっと起きるんだろう、そう決め込んだ、自信に満ちた動きをする。
僕はたまらず声を出して笑ってしまった。声を出す前から肩が震えていたので笑っていることには気付いていたのだろう。顔をあげるとにやりと笑ったきみの顔が視界に入った。
（……あれ？）
きみの顔が、見えない。
逆光になっているのか、白い光に遮られて、見えない。
「いつまで寝ているつもりだ」
声ははっきりと聞こえるのに、顔が見えない。笑っている、と認識しているのは視界からの情報ではないのか。じゃあ、なんなんだ。この感覚は。
（グラハム、きみが…）
「聞こえているのか？カタギリ。こんなところで寝ていると風邪を引くだろう」
心配をかけるな。
小さく呟いた、うんざりしたきみの声は聞こえているのに、顔が見えない。
（グラハム、）
声を出そうとすると、喉で言葉がつまる。
グラハム、グラハム、
何度も名前を呼ぶのに、声にならない。きみには届かない。
グラハム、きみの顔を見せて。怒っている顔でも、呆れている顔でもいいんだ。きみが、呆れたように笑っている、それは分かっているのにどうして…
胸が、締め付けられるような痛みに襲われた。両目が熱くなって、涙が出るような感覚に襲われる。視界はぼやける。けれど、涙が流れるあの感触が体感として感じられない。
（泣いているのに…）

 

 

びくりと身体が硬直して、眼が覚めた。
いつも見る、きみの夢から覚めたのだと気付いて、眼鏡を取る。机に向かって座っている姿勢のままで眠っていたので、身体の関節がところどころ軋んでいる。額を手でおさえていたので、眼鏡のフレームが顔にめりこんでいた。多分、それが痛くて目が覚めたんだろう。眼鏡をはずすと、レンズの部分が少しだけ濡れていた。
（グラハム…今日も、きみの夢をみたよ…）
どんなに呼んでも届かない声は、現在の状況を示している。だって、きみはもうここにはいないのだから。きみが出てくるのは単なる僕の願望。そして、表情が見えないのは…。
（なんだろう？顔が見えない…）
残念ながら、人間の心理について僕は詳しくないので、この夢が何を暗示しているのかまでは分からない。
けれど、会えない彼に強い気持ちを抱いているのは確かだ。そして、ぼろぼろに崩れた僕の心を支えてくれるのはきみだけだ、と心の中で僕は思っているのだ。たぶん。





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誰か…！