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きみが、いつも優しく笑ってくれるのなら僕はこの空を守りたいと思った。
いつまでも。
彼がアロウズに配属されたのは、その日に知った。本部とは遠い前線で聞かされたその話に、何とも言いようのない気持ちが胸の中に去来する。
自分が身を隠している間、彼は戦いを離れて平和に暮らしているのだと聞いた。彼が自分の住んでいる世界とは違うところで生活をしている事を、私は惜しいとも思わなかったし、むしろ祝福するくらいの気持ちがあった。
そうだ、この空は、平和は、きみのためにある。
そう、思っていたのに。
どうして彼が再び物騒な場所に戻ってきたのか理由は分からない。
ただ、その後顔を会わせた彼の表情は、長く一緒にいたあのころとは別人の顔をしていた。
あの、優しい笑顔はどこにもなかった。
そして、気付いているだろう私の正体について、何も触れてはこなかった。
忘れ去られているのであれば、それでいい。最初はそう思った。彼は平和な世界に居て、幸せに暮らして、いつか私との事も楽しかった過去に、思い出に、なって行っても良いのだと思っていた。
けれど、現実は彼にとってそんなに優しくはなかったようだ。
彼が私の正体について触れないのであれば、こちらも知らないふりをするのが礼儀だとばかりに、彼まるで初めて会ったような顔をして話を聞く。
彼は、自分の事について話をすることも極端に少なくなっていた。昔はいつも困ったような顔をして私を見て、それからふふ、と小さな声を出して笑って見せた。そんな彼はどこにもいなくなっていた。
ただ、昔使っていたのとよく似たマグカップでコーヒーを啜っている時だけは、目元が少しだけ緩んだ。いつも厳しい顔をしているなんて似合ないきみの顔が、ふと緩む瞬間を見つけて、心が痛む。
そんな風にきみを苦しめているものは何なのか。本当は聞きたい。けれど、聞けない。
私は今、彼の知らない人物になっている。彼と仲の良かったグラハム・エーカーは過去の人間だ。彼となれなれしく口をきいていた人物は今はもうここにはいない。だから、聞けない。決して、口には出せない。
本部で、彼の姿を見る機会があった。真っ直ぐに前を向いて、私の姿を見止めて視線だけで礼をする。道を少し譲るように横によけたので、通りすがりに肩を叩いた。軽く。
私は、きみの味方だ。
それは、昔からずっと、今も変わらない。
そんな気持ちをこめて。
彼は一瞬だけ振り返ったようだけれど、私にはその姿を見ることはできなかった。
先に彼の前からいなくなったのは自分だ。その間、彼がどんな風になっているのかなんて考えもしなかった。ただ、幸せであるように祈っていただけだ。
(祈るだけで、世界は変わらない)
本当に護りたいのなら、何があっても手放すべきではなかった。離れるなんて、考えなければよかった。今の彼を見て心配するのは、自分の勝手な感傷だ。それは、分かっている。
道は分かたれたのだ。4年前のあの日に。
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まあ、そんな妄想もありつつ、グラハムとカタギリにはいつまでも仲良くして欲しいです。
早くアニメでこのもやもやした関係に終止符が打たれればいいのにな~。ブシドーに対してあっさりと「グラハム!」って呼びかける笑顔のビリーが見たい…。