忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

クリスマスがね、好きなんですよ。
それで一期の少し前くらいの時系列のつもりで書いてみました。



 *****
宅配の荷物が来たので玄関でそれを受け取る。ずしりと思いダンボールを受取ってから、ドアを閉める。さて、これは僕ひとりでリビングまでは運べないなあ。
ダンボールを睨みつけている姿を、リビングのドアのところまできたグラハムが見つける。
「誰か来たのか?」
「いや、オークションで落とした荷物が届いたんだけど、これ運んでくれる?」
足もとの荷物を見て、グラハムがやれやれと言った顔をする。
「自分で持てないような荷物を、どうして買うんだ」
いやみを仕舞うことを知らない彼の口から、そんな言葉が漏れてくる。文句を言いながらもダンボールを持ち上げたグラハムが、その重さに一瞬驚いた顔をして見せた。
「何を買ったんだ」
「開けていいよ。リビングまで運んでくれたらね」
そもそも、この荷物はきみのためにオークションで買ったのだから。そこまでは言わなかったので、グラハムはいぶかしげな顔をしてじっとダンボールを睨みつけた。
僕たちは今、ニューヨークの週貸しマンションに滞在している。クリスマス休暇に誰も誘ってくれない者同士で、一緒に過ごそうと言うことになったのだ。ニューヨークに行きたいと言ったのは僕の方。学生時代に一度だけニューイヤーをここで過ごした。クリスマスからニューイヤーにかけての華やかな雰囲気は他では味わえない。
クリスマス本番を二日後に控え、マンションの窓から見える景色も綺麗に色づいて来た。色とりどりの電飾は夜にならないとどこにあるのかその所在もわからないけれど、曇空からは真っ白な雪が降っている。夜になると、真っ暗な中に電飾が光って、真っ白な雪に照りかえされて二倍に光が増える。見ているだけで胸がわくわくするような光景だ。
玄関から戻る時に何気なく窓の外に視線を投げかけていると、グラハムの不満そうな声が後ろから聞こえてきた。
「カタギリ、これは開けてもいいのか」
重い荷物を持たせておいて、そのまま何も言わなかったことに不満があるんだろう。慌てて振り返ってお礼を言った。
「いいよ。開けて」
グラハムはその言葉を聞くと、カッターナイフを取り出してダンボールを開いた。中から出てきたのは大量の本。
「なんだ、これは」
「きみに、と思ってオークションで落としたんだけど…」
荷物の脇に座り込んでいるグラハムの正面に、僕も座る。一緒になってダンボールを覗き込む。オークションの画像で見たのと同じ、書籍が綺麗に詰まっている。中からは、本が酸化している時の独特のにおいがうっすらとした。中から一冊の本を取り出して、グラハムはまじまじと眺めている。
「何の本だ」
「ニッポンの、武将の本」
僕も一緒になって、ダンボールの中身を取り出して検分した。痛みがあったり、紙が焼けて端が茶色くなったりしているけれど、それでもかなり綺麗な状態だ。一冊手に取って、ぱらぱらとめくる。
「なんだ、全部日本語じゃないか」
「読めない?」
「難しい言葉は、すぐには無理だ」
グラハムも同じように中身を見て、眉間にしわを寄せている。
「きみは、好きだと思ったんだけどな」
難しい顔をしているグラハムを見ながら、ダンボールの更に奥の本を取り出した。少しだけサイズの違う、大きめの写真の入った本。
「ああ、これが欲しかったんだ」
表紙には、僕が大昔に行ったことのあるお城の写真があった。
「ヒメジジョウ。昔、おじさんに連れて行ってもらったことがあるんだ」
白鷺城、と言う別名もある見なれない白亜の城の写真に、グラハムの視線が釘付けになった。すぐに僕の手からその本を奪って中身を確認する。写真の多い本だったので、言葉の細かい意味がわからなくても楽しめる。
「…それで、どうしてこんな本を買ったんだ」
「だから、きみが好きそうだと思って」
実際、城郭の写真に夢中になっているきみを見て笑ってしまった。こんなにもウケてくれるなんて思いもよらなかったから。
「クリスマス休暇は長いし、暇つぶしにもなるんじゃないかな」
僕も、休みの時ぐらいは仕事の事なんて考えたくなかったからね。
ダンボールの中身をシリーズごとに山にして、リビングのソファセットのローテーブルに乗せる。グラハムはすでにソファの下の毛足の長いラグの上に座り込んで、さっきの写真の本に夢中になっていた。僕の言葉にも、生返事だ。
思わずふふ、と笑ってしまって、それをきみに聞かれた。グラハムは本から顔をあげると、僕の顔を見てにやりと笑う。
「しばらくは、退屈しなくて済みそうだな」
「それはよかった」
きみも僕も、仕事を離れると何をしていいのかわからないタイプだから、クリスマス休暇なんて本当は持て余していたんだ。僕がわがままを言ったかたちでこんなところまで連れてきてしまって、きみがつまらないとほんの少しでも思っていたらどうしようかと本当は不安で仕方なかった。
小さなことでもいいんだ。きみが、喜んでくれるんだったら。
外は寒いけれど、暖房のついたこの部屋はとても温かい。それよりも僕はきみがくれた笑顔に胸が温かくなったよ。
そんな事、口に出しては言えないけれど。





>>>
明日はセントラルパークに行って、明後日はローストチキンをおうちで作ります。
クリスマスが終わったらニューイヤーまでブロードウエイをハシゴして、キャッツやシカゴを見ればいい。300年のロングラン公演だ!(笑)
ニューイヤーはグラハムが無理やり屋外スケートリンクにビリーを連れ出してへっぴり腰のビリーにスケートを教えてあげればいいよ。…そうか、スケートの話は面白そうなので書きたい。
外国にある屋外スケートリンクって素敵ですよね。ああゆうとこに一度でいいから行きたい!CNNやフジテレビのニュース番組でニューヨークのクリスマスやニューイヤーを見るたびにいいな~って思います。…まあ、寒がりなので絶対に生きた心地しないと思うけど。
ビリーがオークションで落としたのは日本の城100選と文庫の司馬遼太郎詰め合わせです。どんなに未来になっても姫路城は世界文化遺産だから残っていると思うよ。そしてビリーはそんな姫路城に幼少のころ連れていてもらったことがある…とかそんな妄想。
PR
[116] [115] [114] [113] [112] [111] [110] [109] [108] [107] [106]
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
アクセス解析
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone