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盟友、の言葉にグラハムなりの愛を感じます。
*****
その日、ユニオン司令部より戦闘指揮をとっている先発隊より打電が入る。全戦力をもってガンダム駆逐作戦に入る。
本隊との合流を希望していた僕の携帯端末にはおじからの連絡が入る。その連絡にすぐに応えなかったのは、目の前に出撃するミスター・ブシドーの姿があったからだ。
彼は、僕が前線に行くことを知らない。
「…今回も、本隊とは別行動をするのかい?」
出来上がったばかりのモビルスーツ、マスラオの前で彼に別れを告げる儀式をする。グラハムは仮面に隠れた顔で、小さく微笑んで見せた。はっきりと口に出しては言わなかったけれど、彼は本隊とは合流せずに自分一人でガンダムと戦える場所に目星をつけているらしい。
僕はそれを、敢えて聞かなかった。
「きみには、感謝している」
きみが饒舌になるのは、あの愛しい存在の前でだけだと知っている。短く、飾らない言葉で送ってくれたきみからの感謝の気持ちは、僕の胸にもちゃんと届いた。
それと同時に、胸の奥が少しだけ痛んだ。僕は今から前線に向かう。ガンダムが、ソレスタルビーイングが壊滅するところをこの目で見るために。
言えば、きみはきっと反対するだろう。きみは安全な場所でわたしの帰りを待っていればいい、ときみは言うだろう。それが、技術者を、非戦闘員を守るパイロットの役目なのだと言うのだろう。けれど、僕もそのモビルスーツを作った時点で同罪だ。この命をかけてでも、見届けたいものがあるんだ。その気持ちを、きみはきっとわかってくれない。
だから、一言の相談もきみにはしなかった。
(ごめんね、グラハム)
ヘルメットをつけたきみの顔を見ながら、心の中で小さく謝った。
その言葉に気付いたように、きみの視線が僕を捕える。
「きみは、ここで待っていてくれ」
目元が少しだけ、微笑んでいるように見えた。胸が、締め付けられるように痛む。
「わたしにも、帰る場所があると覚えていられるように」
手をあげてモビルスーツに乗り込むきみに、僕は手を振ってあげることしかできなかった。
口を開くと、すべてを告白してしまいそうで、怖かった。涙が出そうで、怖かったんだ。
僕は、きみの帰る場所になりたかった。いつだって、そのつもりでいた。だけど、本当はそうじゃないんだ。心から望んでいるのは、
(心から、望んでいるのは……)
きみを待っていたい気持ちと、自分から決めた本隊との合流。せめぎ合う気持が、手の先から血の気を引かせた。きみの背中を見つめる視線を、宙へさまよわせた。
4年前の、あの時の記憶がよみがえる。
きみは、もう帰ってこないかもしれない。いや、僕が、きみに会えない状況になってしまうかもしれない。
「グラハム!」
コックピットに消えた姿に、その名前を呼びかける。あの仮面をつけた日に捨てたはずの名前を呼び掛ける。もちろん返事なんてなかったけれど、呼びかけずにはいられなかった。
(……僕の、望みはなんだ…?)
きみには、帰ってきてほしい。
ソレスタルビーイングの壊滅をこの目で見たい。
ふたつは矛盾する事項ではないはずなのに、僕の中で相対する気持ちとしてぶつかり合っている。
(僕の望みは……)
発進するモビルスーツを見ている僕の目に、あの日自分の目の前から消えていった彼女の後ろ姿がかぶって見えた。
このままでは、何もかもをなくしてしまう。
そう、頭では考えたけれど、僕は感情で動く行動を止めることはできなかった。
きみは、こんな僕を笑って許してくれるだろうか。
>>>
今日もかなりのアルコールを摂取しているので、自分で書きながらビリーがかわいそうで泣きそうになりました。本篇的にはビリーは思慮の足りない人間として制裁を受ける立場にあると思うのですが(あの人完全に私欲で動いているものね…)でも好きなので救われてほしいです。命も、心も。
本隊との合流を希望していた僕の携帯端末にはおじからの連絡が入る。その連絡にすぐに応えなかったのは、目の前に出撃するミスター・ブシドーの姿があったからだ。
彼は、僕が前線に行くことを知らない。
「…今回も、本隊とは別行動をするのかい?」
出来上がったばかりのモビルスーツ、マスラオの前で彼に別れを告げる儀式をする。グラハムは仮面に隠れた顔で、小さく微笑んで見せた。はっきりと口に出しては言わなかったけれど、彼は本隊とは合流せずに自分一人でガンダムと戦える場所に目星をつけているらしい。
僕はそれを、敢えて聞かなかった。
「きみには、感謝している」
きみが饒舌になるのは、あの愛しい存在の前でだけだと知っている。短く、飾らない言葉で送ってくれたきみからの感謝の気持ちは、僕の胸にもちゃんと届いた。
それと同時に、胸の奥が少しだけ痛んだ。僕は今から前線に向かう。ガンダムが、ソレスタルビーイングが壊滅するところをこの目で見るために。
言えば、きみはきっと反対するだろう。きみは安全な場所でわたしの帰りを待っていればいい、ときみは言うだろう。それが、技術者を、非戦闘員を守るパイロットの役目なのだと言うのだろう。けれど、僕もそのモビルスーツを作った時点で同罪だ。この命をかけてでも、見届けたいものがあるんだ。その気持ちを、きみはきっとわかってくれない。
だから、一言の相談もきみにはしなかった。
(ごめんね、グラハム)
ヘルメットをつけたきみの顔を見ながら、心の中で小さく謝った。
その言葉に気付いたように、きみの視線が僕を捕える。
「きみは、ここで待っていてくれ」
目元が少しだけ、微笑んでいるように見えた。胸が、締め付けられるように痛む。
「わたしにも、帰る場所があると覚えていられるように」
手をあげてモビルスーツに乗り込むきみに、僕は手を振ってあげることしかできなかった。
口を開くと、すべてを告白してしまいそうで、怖かった。涙が出そうで、怖かったんだ。
僕は、きみの帰る場所になりたかった。いつだって、そのつもりでいた。だけど、本当はそうじゃないんだ。心から望んでいるのは、
(心から、望んでいるのは……)
きみを待っていたい気持ちと、自分から決めた本隊との合流。せめぎ合う気持が、手の先から血の気を引かせた。きみの背中を見つめる視線を、宙へさまよわせた。
4年前の、あの時の記憶がよみがえる。
きみは、もう帰ってこないかもしれない。いや、僕が、きみに会えない状況になってしまうかもしれない。
「グラハム!」
コックピットに消えた姿に、その名前を呼びかける。あの仮面をつけた日に捨てたはずの名前を呼び掛ける。もちろん返事なんてなかったけれど、呼びかけずにはいられなかった。
(……僕の、望みはなんだ…?)
きみには、帰ってきてほしい。
ソレスタルビーイングの壊滅をこの目で見たい。
ふたつは矛盾する事項ではないはずなのに、僕の中で相対する気持ちとしてぶつかり合っている。
(僕の望みは……)
発進するモビルスーツを見ている僕の目に、あの日自分の目の前から消えていった彼女の後ろ姿がかぶって見えた。
このままでは、何もかもをなくしてしまう。
そう、頭では考えたけれど、僕は感情で動く行動を止めることはできなかった。
きみは、こんな僕を笑って許してくれるだろうか。
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今日もかなりのアルコールを摂取しているので、自分で書きながらビリーがかわいそうで泣きそうになりました。本篇的にはビリーは思慮の足りない人間として制裁を受ける立場にあると思うのですが(あの人完全に私欲で動いているものね…)でも好きなので救われてほしいです。命も、心も。
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