忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

これはただ単に、ファイル更新をするのが面倒だっただけです…。
そのうちテキストの方に移動します。



 *****
机に置いた時計から、電子音のアラームが鳴る。無意識にその音を止めて作業を再開して、少ししてから気がついた。慌てて時計を見ると午前8時を少し過ぎた時刻を指している。
(自分でセットしていたのに…)
パソコンに向かう作業をしていると、どうしても忘れてしまう。だから、アラームをセットしたのにやっぱり忘れてしまうなんて。今の作業を途中保存して、立ち上がる。
三日前から着ている服と、白衣の襟を正す。髪の毛をさっと手で撫でつけると、すこしべっとりとした感触があった。
(…やっぱり、シャワーくらい入るべきだった)
思ったけれど、部屋を見渡すと同じような状況になっている技術部の面々が視界に入る。まさか自分だけ作業を抜けてシャワーを浴びるなんて言いだせない状況だ。毛布をかぶって机の上に突っ伏している者でさえ、眼の前のパソコンは動きを止めない。
少し悪いな、と思いながらもシャワーを浴びるのを諦めたんだから、中座することくらいだったら許してくれるだろう。勝手にそう考えて、何も言わずに部屋を出た。
向っているのは、ガレージに併設されているコントロールルームだ。
そこに向かう途中で、廊下の窓から見た真っ青な空に一瞬覚える。けれど、視界の中に空色に溶けそうなブルーのフラッグの姿を見て、嬉しくなった。さっきまで歩いていた足が、自然に走っている速度になる。
コントロールルームについた時には、先発していた編隊が既にガレージに格納されているところだった。遥か眼前に、何人かパイロットスーツを着た姿が見える。
僕は彼の姿を探して視線をきょろきょろさせる。その間にも、コントロールルームに詰めているオペレーターに、訓練結果を取りにきたんですか?なんて話しかけられて、上の空で返事をしていた。
今回、フラッグが試験機としてはじめて長距離飛行を行った。確かにそのデータは僕の欲しいものだったけれど、僕が待っていたのは彼だ。長距離飛行訓練の間、ずっとフラッグに乗り続けていたグラハム・エーカー。会うのは三日ぶり。
彼が試験機から出てきた彼がエレベーターに乗るのを見て、僕もコントロールルームから出た。丁度、その部屋を出た廊下で、彼を見つける。何人かの同僚と談笑しながら歩いている姿を遠目に見て、僕は足を止めた。
(…良かった、元気そうで)
彼の姿を見て、それだけで満足だった。だから、それ以上近付かないようにそこで止まっていたのに、こちらに気がついた一人のパイロットが、グラハムに僕の存在を告げる。彼は、白い歯を見せて笑いながらこちらに近付こうとした。
「…グラハム、それ以上近付かないで」
片手を上げて挨拶をした彼に、お帰りの一言も言わないで、手を上げてその動きを所制する。グラハムは廊下の真ん中でぴたりと動きを止めて、訝しげに僕を見た。
「…お帰り、無事でよかった」
何でもない風を装って声をかけたけれど、グラハムは相変わらず眉間にしわを寄せている。
「……きみも。…泊まり込みをしていたのか?」
こんなに早い時間に軍施設に居るのだから、そう聞かれるのは当たり前だ。けれど僕は、その言葉で思わず自分の気にしている事を言いあてられてた気持ちになって、白衣の襟を左手でぎゅっと握りしめてしまった。
「ああ…うん。そうなんだ。三日前から」
僕の言葉を聞いて、グラハムの足がぐっと前に出る。
「グラハム、ストップ!」
一歩前に出たグラハムと、一歩後ずさった僕。後で見ていたみんなが、僕ら二人の行動を見て不思議な顔をしているのが視界に入った。
「どうしたんだ、カタギリ」
「別に、どうもしない」
首を横に振ったけれど、どうもしない、と言う態度ではない。僕はすぐに次の言葉を放った。
「三日前から風呂に入ってないんだ。だから、近付かないで」
自分では慣れてしまって気付かないけど、たぶん凄く臭い。そう言ってグラハムの動きを封じた。グラハムは、どうしていいかわからない、と言いたそうに、両腕を宙に投げ出している。
「きみが元気なら、それでいいんだ。僕は戻らなくちゃいけない」
じゃあ、そう言ってグラハムに背中を向ける。自分で言いだした言葉が恥ずかしくて、それでグラハムの顔をまともに見ることができなかった。やっぱり、シャワーくらいは浴びてくるんだった。こんな恥ずかしい事を説明しなきゃならないなんて。
「カタギリ!」
顔を地面に向けたまま廊下を歩きだそうとしてた僕の背中に、グラハムの声がかかった。振り返ると、笑顔で手を振っている。
「後で迎えに行く。私も二日、風呂に入っていない」
「あとで?」
「朝食を、一緒に摂ろう」
爽やかにそう言うと、グラハムはみんなと一緒に廊下を反対側に歩き出した。
(きみは入らなくてもいいんじゃないのか…)
朝日を浴びてきらきら光る金色の髪の毛をみながらそう思ったけれど、すぐにグラハムに言われたことを思い出す。
後で迎えに行く、だって。
やっぱりみんなには悪いけれど、シャワーは浴びに行く事にした。
三日間の泊まり込みで正直なところ睡眠も充分にとれない状態だったけれど、グラハムの顔を見ると元気になった。
(ゲンキンだな…)
元気になるために、わざわざ帰ってくる時間を調べて待っていたのだから当然なんだけど。冴えて来た頭の中で、グラハムの笑顔を思い出す。
そうしてまた少し、頑張れる気がしてきた。





>>>
11月にCSで一期の再放送があるので、それを見てユニオンのみんなの日常的なものを書けたらいいなあって思います。
PR
[80] [79] [78] [77] [76] [75] [74] [73] [72] [71] [70]
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
アクセス解析
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone