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昨日の話の続き。



 *****
はじめて地球連邦の軍施設に入った時、とても懐かしい空気を感じた。
ユニオンに居たのは4年前。そんなに時間が経っているとは思えないのに、懐かしいどこかに帰ってきたような気持ちになった。
(グラハム…)
そして、軍服に身を包んだ面々とすれ違うと、どうしても彼の事を思い出してしまう。彼はもっと体格が良かっーつた。彼はもっと腕が長かった。彼はもっと…。
すれ違う人間すべてを彼と比べている自分に気づいて、少し笑ってしまった。僕が作るモビルスーツに乗るのはきみだけだと思っていたからだ。けれど、もうそんなわがままを言ってられない。だってきみはもう居ないのだから。
「良く決心してくれたな」
最初に会いに行った叔父が、やさしい声で言ってくれた。
「詳しい説明はあとだ、とりあえず更衣室に案内させるから着替えてきなさい」
いくつかの書類を手渡して、人を呼ぶ。
「相変わらず、スーツが似合わないな」
小さなため息と一緒に、ひどく失礼な事を言われた。そういえば、ずいぶん昔になるけれど、ユニオンの軍に入隊した時もそんな風に言って笑われた。叔父の中で僕はいつまでも子供なのだな、と思うと、あの頃は反発を覚えたけれど今は少し笑えてしまう。
「ビリー、」
迎えが来て、部屋を出て行こうとする僕の背中に叔父の声がかかった。
「なに、」
「…以前聞いた話は…」
言いにくそうに聞いてくる。
そうだ、僕はクジョウくんと暮らし始めた時に叔父に少し彼女の話をしていた。彼女を理由にアロウズに参加するのを断っていたのだ、聞かれるのは当然だろう。昨日電話した時も、きっとその事を聞きたかったに違いない。
「振られたんだよ。仕方ないよね」
僕が情けない男だから、そうんなったんだ。自嘲の意味も込めてそう言うと、優しい叔父は曖昧に笑って「そうか」と言った。
更衣室に案内をされている間、すれ違う軍服の人間はみな一様に見なれない僕の方を、遠慮しない視線で見てきた。こちらも、遠慮しない視線を向けていたので当然かもしれないけれど。
(……、)
ふと視線を向けた、窓の向こうの廊下にある姿に眼を止める。思わず、足を止めてしまった。その姿が、あまりにも彼に似ていたので。
「あのひと…」
部屋の案内をしてくれていた人物を呼びとめて、見ていた方向を指さす。その時にはすでに彼の姿はなかったけれど、遠目に後姿を見て「ああ、」と小さく呟いた。
「彼、モビルスーツには乗らないのかな」
聞いた声が、はしゃいでいる、と自分でも感じる。彼に似ているあの背格好で、僕が作るモビルスーツに乗ってくれないだろうか、そんな思いが頭を過った。だから、思わず声がはずんだのだ。
「あの方は教官ですよ。今は出撃することはありません」
静かに言われて、はしゃいだ気持ちが一瞬にして沈んだ。
「そう…。乗ってくれればいいのに…」
「どうしてですか?」
「似ているんだよ。僕の、知っているパイロットに」
今は、もういないけれどね。そこまで言おうとして、口を閉じた。胸がどきどきしているのは、これからの仕事の事を考えてなのか、それとも彼に似ている人を見つけたからなのか。





>>>
あれ…なんか書きたいと思っていたくだりが入らなかった…。
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