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最近また寒くなってきたので、あったかくなる話を書きたくなりました。
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前日からの泊まり込みで、その時はどうも神経がまいってしまっていたみたいだ。僕は気付くと仮眠用のブランケットを持って自室を後にしていた。
どうしたんですか?と通りすがりの人に聞かれても、曖昧に笑って返事をしていた。頭の中に霧がかかったみたいに意識はぼんやりとしていて、僕自身どこに向かって歩いているのか自覚がなかった。
そう。それは多分寝不足の所為だ。
モビルスーツのカスタマイズに必要なデータを取るのに連日ユニオンの施設に缶詰めになって、職場にいる以上はゆっくり休憩をすることもできなくて、それで寝不足だったのだ。
だけどその時の僕の意識はぼんやりとした現実感のない中にあり、夢遊病者のようにブランケットを持ったままふらふらと廊下を歩いていた。
どこか、ゆっくり寝る場所を探して。
「カタギリ、どうしたんだ」
何人目かに通り過ぎた人の中に、きみが居た。演習を終えたところなのか、それとも休憩時間だったのかは定かではない。けれどきみの声は乳白色に濁った僕の意識の中に鮮やかに響いた。まるで、それだけが特別のものであるように。
「……」
返事をしたかったけれど、声が出ない。
(眠い)
眼鏡を取って目をごしごしこする僕に気付いたきみは、わざわざ僕の手を取って仮眠室までの道を誘導してくれた。まるで、介護みたいだ。そう思ったけれど、笑い声もでてこなかった。
「疲れているんだな」
小さく笑った僕の顔を見て、きみがほほ笑む。さっきまでぼんやりとしていた視界の中に、きみの金色の髪の毛だけがきらきらと光輝くように見える。
「……グラハム、」
仮眠室まで連行された僕は、そこのベッドに導かれても、きみの手を離さなかった。もう片方の手には、ブランケットを握ったままで、まるで僕は寝る前にわがままを言う子供だった。
「グラハム、寒いんだ……」
一緒に寝て欲しい、と言う言葉まで出てこなかった。自分が強請っている言葉を聞いている意識も、半分自分のものではないような気がする。不思議な気持だ。
その時きみがどんな風に返事をして、どんな風に僕の隣にもぐりこんでくれたのはわからない。
けれど、次に意識が戻った時にはひとつのブランケットを取り合うようにして仮眠室の狭いベッドの中で二人並んで寝ていた。
「……ごめん…」
意識が戻って、寝不足の頭が妙にはっきりしているのに気付いてから慌てて口にした。きみはすぐに目を開いて
「なんだ、すぐに起きたな」
と言って笑った。
時間して一時間くらいだと思う。きみが腕時計を見ながら言う。
僕は自分のしたことを自覚し、恥ずかしくなって視線を伏せた。
「ごめん…っ」
もう一度謝って頭を下げると、グラハムは「構わない」と言って僕の頬に少しだけ触れた。
視線がはっきりと重なったけれど、僕は恥ずかしくてじっとその眼を見ていられなかった。
仮眠室で一人で眠っている時はいつも指先が冷たくなるのに、今日はそこが温かい。
きみが一緒にブランケットをかぶってくれたからかな。
嬉しくて、「ごめん」の他にも「ありがとう」と言いたかったけれど、それも照れくさくて言えなかった。
どうしたんですか?と通りすがりの人に聞かれても、曖昧に笑って返事をしていた。頭の中に霧がかかったみたいに意識はぼんやりとしていて、僕自身どこに向かって歩いているのか自覚がなかった。
そう。それは多分寝不足の所為だ。
モビルスーツのカスタマイズに必要なデータを取るのに連日ユニオンの施設に缶詰めになって、職場にいる以上はゆっくり休憩をすることもできなくて、それで寝不足だったのだ。
だけどその時の僕の意識はぼんやりとした現実感のない中にあり、夢遊病者のようにブランケットを持ったままふらふらと廊下を歩いていた。
どこか、ゆっくり寝る場所を探して。
「カタギリ、どうしたんだ」
何人目かに通り過ぎた人の中に、きみが居た。演習を終えたところなのか、それとも休憩時間だったのかは定かではない。けれどきみの声は乳白色に濁った僕の意識の中に鮮やかに響いた。まるで、それだけが特別のものであるように。
「……」
返事をしたかったけれど、声が出ない。
(眠い)
眼鏡を取って目をごしごしこする僕に気付いたきみは、わざわざ僕の手を取って仮眠室までの道を誘導してくれた。まるで、介護みたいだ。そう思ったけれど、笑い声もでてこなかった。
「疲れているんだな」
小さく笑った僕の顔を見て、きみがほほ笑む。さっきまでぼんやりとしていた視界の中に、きみの金色の髪の毛だけがきらきらと光輝くように見える。
「……グラハム、」
仮眠室まで連行された僕は、そこのベッドに導かれても、きみの手を離さなかった。もう片方の手には、ブランケットを握ったままで、まるで僕は寝る前にわがままを言う子供だった。
「グラハム、寒いんだ……」
一緒に寝て欲しい、と言う言葉まで出てこなかった。自分が強請っている言葉を聞いている意識も、半分自分のものではないような気がする。不思議な気持だ。
その時きみがどんな風に返事をして、どんな風に僕の隣にもぐりこんでくれたのはわからない。
けれど、次に意識が戻った時にはひとつのブランケットを取り合うようにして仮眠室の狭いベッドの中で二人並んで寝ていた。
「……ごめん…」
意識が戻って、寝不足の頭が妙にはっきりしているのに気付いてから慌てて口にした。きみはすぐに目を開いて
「なんだ、すぐに起きたな」
と言って笑った。
時間して一時間くらいだと思う。きみが腕時計を見ながら言う。
僕は自分のしたことを自覚し、恥ずかしくなって視線を伏せた。
「ごめん…っ」
もう一度謝って頭を下げると、グラハムは「構わない」と言って僕の頬に少しだけ触れた。
視線がはっきりと重なったけれど、僕は恥ずかしくてじっとその眼を見ていられなかった。
仮眠室で一人で眠っている時はいつも指先が冷たくなるのに、今日はそこが温かい。
きみが一緒にブランケットをかぶってくれたからかな。
嬉しくて、「ごめん」の他にも「ありがとう」と言いたかったけれど、それも照れくさくて言えなかった。
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