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白い明かりの下で、きみと顔を合わせた時に心配そうなそぶりをされた。
「……大丈夫か」
手袋をしたままの手を差し出して僕の頬に触れる。その手は、温かくない。
「大丈夫だよ」
無理に笑うこともせず、元気だと口にすることもなく、差し出された君の手を払いのけた。
僕の心を蝕んでいる何かが、きみを拒否している。
あの手が温かいなんて、信じない。きみの言葉も、もう聞きたくない。
宇宙に出て、真っ暗な世界の中を彷徨するように漂う自分を見つけた。何かに一生懸命にならないと、自分の存在なんてすぐに足もとから崩れ去るものだと実感した。
ガンダムを斃す。
それだけを目の前の目標にしていた。何も、迷いはない。
(だけど……)
僕はまた、失ってしまうのかもしれない。優しい友達を。
その事に危機感を覚えたのは、いつからだろう。新型のモビルスーツが出来上がった時には、そんな事かけらも考えなかった。僕のモビルスーツと、きみの腕があれば死ぬことなんてない。絶対に。
そう、信じていた。
けれど、攻撃姿勢ではないガンダムをただじっと見守っていたきみを見て、きみと僕の想いは違うのだと改めて知らされた。
技術者とパイロット。専門分野の違いはあっても、きみと僕の戦う理由は同じものだと思っていた。失った仲間のため。揺るがされた自尊心のため。けれど、きみがそうでないことに僕は気付いた。
窓の外に見える宇宙の闇を見ながら、そこに手を当てる。ガラスに映った自分が暗闇の中に浮いて見える。
僕は、ただ一人になってしまった。
自分の感情のままに、失われた恋や愛なんて言う軽率な物のために費やした時間とともに、何もかもを失くしてしまった。
(グラハム…僕にはきみの見ている景色が見えないよ…)
きみの手を、優しいと思えなくなった。きみの気持ちを、温かいと思えなかった。きみが飛んでいる空を、見失った。
本当は、きみの心がどんなだか知っているはずなのに。どうしてそう思えなくなったかわかっているはずなのに、もうもとの場所に戻ることはできない。僕は最初の一歩を大きく間違えたところに下ろしてしまった。振り返っても、帰る場所がなくなってしまった。
いつか、すべてが終わっても、僕はきっときみと同じ景色を見ることはできないだろう。
(それが…悲しい……)
もう無くなってしまったと思った涙が、溢れてくる。
きみの為じゃなく、自分の為の涙が。
(きみは、赦してくれるかな)
この期に及んで、きみの友情に甘えて、期待した。それくらいしか、今の僕にはできないから。
たとえ全てを失っても、同じ景色を見ることができなくても、きみには生きていてほしい。
こんな僕を、赦してくれなくても構わないから。
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ビリーを見るとそわそわしちゃうので、ガンダムを見るのが最近怖いんです…。明日ガンダムが見れないかも…は、ただの時間的余裕がなくて、の事なのですが。