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じっと我慢の子だったマスラオうさちゃんがかわいかったのですが、出撃前の1コマを思いだして、そうそう、お前はそこにいちゃだめなんじゃないのか、って思った(笑)



 *****
作戦行動の終了からほどなくして、モビルスーツで出撃した面々が帰還した。その中には、永遠に帰ってこない者もあったのに、きには今回ただ後衛で戦況を見守るだけだった。
帰ってきたきみを睨みつけて、叱咤する権利を僕は持っていると思う。思っているからこそ、きみの帰りを待ってわざわざコントロールルームまで出向いたんだ。
「……カタギリ、」
僕の顔を見て、きみは少しだけ顔色をかえた。誰に何を言われても気にしないそぶりをするのに、僕に対しては一瞬だけでも態度を変える。そんなのはきみらしくない。けれど、僕はその時嬉しいと思うよりもきみが憎かった。
「どうして、前線に出て行かなかったんだい」
睨みつけている視線を真正面から受け止めて、きみは苦笑したような表情を作った。僕が怒っているのはわかっているくせに、それを受け流すように、小さく笑う。
両手をぎゅっと、握りしめた。
「僕は見ていた!きみは、モビルスーツに乗って戦えるのに、それをしなかった!」
どうしてだ、と問いつめる僕の視線に、きみは応えなかった。ふ、と視線を外すと、僕の横をすり抜けて通ろうとする。
「答えろ、グラハム」
すり抜けるきみの肩を掴んで、立ち止まらせた。僕のちからはそんない強くないのはわかっている。けれど、その時はそんな比力なものであっても、ありったけの力を込めたんだ。きみの顔が少し苦痛にゆがんだ気がした。
「……答えろ、」
真っ直ぐにきみを睨みつけると、きみはまた僕から視線をそらして、肩に乗った手を払いのける仕草をした。
「カタギリ、きみは少し落ち着いた方がいい」
そんな、くだらない言葉で僕の憤りを収めようとする。
僕は落ち着いているさ。いつだって冷静だ。だから、ここにいる。ここで、きみを見届けると、きみと、僕の作ったモビルスーツの戦いを見届けると誓ったんだ。
きみと僕の願いは同じものだと思ったのに!
払いのけた手を、きみが掴んだ。
ぎゅっと手を握られるのは、いつぶりだろう。それから顔をあげて、今度は自分から視線を合わせてきた。きみの綺麗な目に真正面から見据えられて、僕は一瞬動けなくなる。
心にあった感情を、忘れそうになる。
「近いうちに、きみの望みは叶う。それが、今日でなかっただけの話だ」
突き放すように、まるで他人事のように、きみはそう口にした。それから、まるで僕の方が邪魔ものみたいに、手を振りほどかれた。
(グラハム…)
立ち去って行く背中を見つめる。
(グラハム…ごめん……)
きみには、きみの人生が。考えが。理想が。美学が。あるのは、わかっていた。わかっていて、僕の勝手な感情をきみに注いでいた。
(ごめん……)
わかっていて、それをしている僕は、きみに甘えていた。甘えることしか、できないから。
きみの言いたいことがわかって、僕は急に動悸が激しくなるのを感じた。涙を流してしまうかと思った。
(僕は…勝手だ……)
きみに、おじさんに、周囲の全部に甘えて自分の気持ちに決着をつけようとしている。そんな事、許されるはずがないのに。わかっているのに。
それでも、願わずにはいられない。
きみが、ソレスタルビーイングを、僕から何もかもを奪ったガンダムを、斃してくれることを。





>>>
ぐだぐだになったビリーが、それでもグラハムの事を信じて、好きでいてくれたらいいな~って思った結果がこんなかたちになってしまいました。戦争をしている人は、小さなことでも自分の中の倫理と正義の矛盾の中に生きているのだと思います。いつか、グラハムの正義について自分なりに解釈してそれをテキストにできればいいなあ、って思っています。と、言う妄想…(笑)
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