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ドーナツって、「ドーナツ」なのか「ドーナッツ」なのか。
どっちが正しいんだろう。
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パソコンに向かっていると、どこからか良い匂いがしてきた。どこから、なんて考えなくてもすぐ分かる。きっとグラハムがキッチンで何かを作っているんだ。
それにしても、いつもの料理の匂いと違う。甘い匂いがしているので、つい顔を上げてしまった。
(どうしたんだろう…)
グラハムは特別料理が好きってわけでもないし、料理は僕ができないのでしぶしぶ作ってくれているんだと思っていた。勿論甘いものを食べる時は外で買ってきてくれる。
仕事をしていた手を止めて、小さく溜息を吐いた。甘い匂いで顔を上げた時にわかっていたんだ。もう集中力が足りなくなっているから、これ以上の作業は無理だ。
仕方なしに作業途中の仕事を途中で保存して、椅子から立ち上がった。
キッチンに向かうと、グラハムがエプロンをつけて何かを作っている。
「良い匂いがする」
キッチンに顔を出してきみを見ると、きみは顔だけ振り返ってにこりと笑う。小麦粉と、バターと卵と砂糖の匂い。きみがこんなに甘い香りに包まれている姿なんて見た事がなかった。
「ビリー、仕事はもう良いのか」
気遣ってくれる言葉が嬉しくて、こちらを見てくれる顔を見ていたくてそこに突っ立っていると、キッチンには入ってくれるなと言うような視線を送られた。
「何を作ってるの、」
あんまり露骨に嫌がるものだから、余計に気になる。だけどきみは応えてくれない。
「あっちでコーヒーでも飲んで待っていろ」
最後にはコーヒーの入ったマグカップを渡されてキッチンを追い出された。
そう言えば一緒に暮らし始めた時に何か食べようとおもってキッチンに入って、その辺全部をぐちゃぐちゃにして怒られたっけ。自分のデスク周りも片付ける事ができないきみが、キッチンの整理整頓なんてできるわけがないんだ、と言ってグラハムは笑った。それ以来、キッチンには入っていない。それどころか、近付くのも禁止されているような状態だ。
そんなに酷くない、と自分では思っている性格も、グラハムからすれば壊滅的な短所であるらしかった。
仕方なしにダイニングテーブルに座って、コーヒーを飲む。見ていなくても、良い匂いはそこまで漂ってきているので、その匂いだけでお腹いっぱいになる。
ああ、でもその匂いには覚えがある。
「ビリー、待たせたな」
しばらくしてきみが持ってきたのは、作りたてのドーナツだった。それも、皿にてんこ盛りになっている。
「…なにこれ、」
ドーナツだって、見ればわかる。だけどどうしてそんなものが山盛りになっているんだろう。
「作り方を教えてもらったんだ。きみが、食べたいだろうと思って」
にこにこと満足そうに微笑みながら、そうだろう?と疑う事のない目が訴える。
確かにドーナツは好きだ。好きだけど、こんな山盛りにされても全部食べられるかどうかは分からない。
(……そうか…僕が好きだからか…)
きみなりの、サプライズプレゼントを用意してくれたんだろう。その気持だけ、十分嬉しい。
「ありがとう、グラハム」
山盛りのドーナツの一番上にあるのをひとつ手に取る。綺麗にわっかになったドーナツにかじりついて、僕も笑った。
こんなにおいしいものを食べたのは久し振りだよ、と感想を言ったら、ビリーはお世辞が上手だな、と返された。
そんなつもりは、なかったのに。
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まゆはクリスピークリームよりもミスドのほうが好きです。
塩キャラメルショコラがすごくすごく好きです。大好きです。
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