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システム整備をするのにパソコンのモニタをずっと睨みつけていて、背中が痛くなってきた。少しだけ伸びをして、ついでに何時間ぶりかで部屋を出ることにする。
アロウズの研究所はユニオンの施設よりも広かったけれど、結局ひとつところでじっとしているのだから、施設が広くてもそんな事に何の意味もない。
自動販売機で缶コーヒーを買って、廊下にあるベンチに座る。窓から見える空を見上げて、ああ、今はあの空の向こうにガンダムと、ソレスタルビーイングの戦艦があるのだなあ、とぼんやりと考える。
モビルスーツの開発に携わっている瞬間だけ、あの想いを忘れることができる。だから、余計に没頭できるのだ。あの出来事については後悔もたくさんあるけれど、悪い事ばかりではなかった。
(……そんな冷静にもなれないけど…)
小さくため息を吐いて、缶コーヒーを一口のんだ。
ぼんやりとしている時間なんてないのは分かっていて、深く呼吸をしてから目を閉じてしまった。
瞬間訪れた暗闇に、寝ちゃいけないな、と考えながらも、意識が深く沈んでいゆくのをかんじる。
カタギリ、
誰かに呼ばれた気がした。誰か、ではない。いつも僕のそばにいた彼の声だとわかっている。
カタギリ、
二度目の呼びかけに、ああ、眼を覚まさなきゃいけないと思いながらも、瞼が開かない。きみの声は、浅い眠りの中でとても心地よく聞こえてくる。
ビリー、
今度は名前を呼ばれて、くすぐったくなった。これ以上心地よくなってしまえばもっと深い眠りに落ちて行く。
意識が、浅いところと深いところの間でうろうろしているのが自分でもわかる。
ぐらりと頭が揺れた。
ああ、危ない。
そう思った瞬間に、頭が倒れるのが途中で止まった。温かい何かに触れて、きみの匂いがした。
時間にして、ほんの少しの間だったと思う。気がつくと、僕の隣にきみが座っていて、眠っている僕に肩を貸してくれていた。
身体をまっすぐにすると、肩からぱさりと何かが落ちる。視線に入ったのは、きみが来ていたあの赤い羽織だ。
隣を見ると、アロウズの深緑の制服を着ているきみが座っている。仮面に隠れた顔を覗き込むと、瞼が閉じていた。昔のように、長いまつげが揺れているのを見て、ふふと笑ってしまう。
眠っている僕にわざわざ羽織を貸してくれるくらいなら、もっと他にすることがあるんじゃないのか。
心の中で優しいきみに意地悪な事を思いながらもう一度だけきみに寄りかかった。
グラハム・エーカー。きみはどんな夢を見ているんだろうか。浅い眠りの中で、僕の声を聞いてどんな風に思ってくれるんだろうか。
触れている箇所から気持ちがつながればいいのに。
肩にかけてくれていた羽織をそっときみの背中に戻して、耳元に口を近付けた。
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ビリーがかわいくてかわいくてたまらないんだけど、そんなかわいいビリーをグラハムが甘やかす話を書きたいです(希望)。