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ユニオンの頃のグラハムとビリーが好きです。
*****
廊下を歩いていると、すれ違いざまに何人かに声をかけられる。
報告書あがってますからメールで送ります。アイリス社の担当者から連絡がありましたよ。明日の飛行訓練実施時刻が変更になりました。
ああ、わかったから全部あとでメールで送っておいてよ、と返事をしたくなる事柄ばかりだったけれど、そのいちいちに返事をしなくても慣れている人たちばかりなので、僕はその声を無視して廊下を進んで行く。
そのうちの誰かに、会議室におやつがありますよ、と教えられた。
(おやつ…?)
耳に入った言葉に、足を止める。止めたけれど、それを言った本人はもうどこかに行ってしまっている。それも、僕がわざわざ返事をしないのを分かっているからだ。
(会議室におやつ……)
食堂に行けばいくらでも食料はあるのに、どうして会議室におやつがあるんだろう。わざわざ言ってくると言うことは、そこに僕の好きなものがあると思って間違いない。
急に空腹を覚えて、進行方向を変えた。
研究室に戻るつもりだった足で、別フロアにある会議室に向かう。その間も何人かに声をかけられたけれど、中には会議室のおやつの事も含まれていた。
どうせ、誰かが会議の時に気を使ってもってきたものが残っているのだ。「空室」の札がかかっている会議室のドアをあけると、本当にテーブルにおやつが乗っている。ドーナツと、ワッフル。女の子の好きそうな見せのパッケージが目につく。事務方の女の子に買いに行かせて、いかつい軍部のおっさんどもが食べなかったのだろう。
(直接持ってきてくれればいいのに)
どうせこんなところに置いてあるおやつは、誰も取りに来ないだろう。僕は箱に入ったままのドーナツを研究室に持って帰ろうと思って会議室の中に入る。
「やっぱり、来ると思った」
途端に、聞き慣れた声が耳に入る。
声のした方を見ると、誰もないと思っていた会議室の中に、グラハムの姿があった。スーツにネクタイ。ジャケットは隣の椅子の背中にかけてある。その格好から、会議に出席でもしてたのかな、と一瞬考えた。
それにしても、やっぱり、だって。勝ち誇ったように言われたことには多少かちんとくる。
「おやつがありますよ、って言って回っていたのはきみの部下かい」
むっとしたままの視線でグラハムを睨みつけると、グラハムはくすくす笑いながら立ちあがる。僕の隣まできて、テーブルに置かれたままだったドーナツの箱を持ち上げた。
「誰にも食べてもらえない差し入れが気の毒だっただけだよ。きみに持って帰ってもらえると、嬉しい」
僕の質問を何気なく肯定し、くつくつ笑う声は止めない。なんていやみなやつだ。だけど、心の底から憎いわけじゃない。
(グラハムは、ずるい)
どんなにイヤミを言っても、どんなに人の事を笑っても、きみの綺麗な顔を見ると許してしまう。だから、ずるい。
僕は小さくため息を吐いて、グラハムの手からドーナツの箱を受け取った。ちらりと顔を見ると、自信満々の表情でこちらを見ている。
ああ、きみはきっと、このあと僕が口にする言葉もわかっているんだ。
「グラハム、コーヒーくらいは出すから、今から一緒にこれを食べる?」
きみが甘いものをあまり好きではないのは知っている。特別好きで、ドーナツを食べているのではないと知っている。だけど、きみが僕のコーヒーを好きでいてくれているのも、知っているんだ。だから僕は、きみにどんなに笑われても、文句を言えない。
グラハムは満足そうな顔をしてうん、と頷いた。
>>>
出会ったときはグラハムの事を可愛い弟だと思っていたビリーだけど、いつの間にか完全に立場が逆転し自分が面倒を見られている立場だったらかわいい…ってちょっと思ったのでした。グラハムの手の内で踊らされるビリー。そんなのがすきです。
お話の時系列はガンダム出現前です。
報告書あがってますからメールで送ります。アイリス社の担当者から連絡がありましたよ。明日の飛行訓練実施時刻が変更になりました。
ああ、わかったから全部あとでメールで送っておいてよ、と返事をしたくなる事柄ばかりだったけれど、そのいちいちに返事をしなくても慣れている人たちばかりなので、僕はその声を無視して廊下を進んで行く。
そのうちの誰かに、会議室におやつがありますよ、と教えられた。
(おやつ…?)
耳に入った言葉に、足を止める。止めたけれど、それを言った本人はもうどこかに行ってしまっている。それも、僕がわざわざ返事をしないのを分かっているからだ。
(会議室におやつ……)
食堂に行けばいくらでも食料はあるのに、どうして会議室におやつがあるんだろう。わざわざ言ってくると言うことは、そこに僕の好きなものがあると思って間違いない。
急に空腹を覚えて、進行方向を変えた。
研究室に戻るつもりだった足で、別フロアにある会議室に向かう。その間も何人かに声をかけられたけれど、中には会議室のおやつの事も含まれていた。
どうせ、誰かが会議の時に気を使ってもってきたものが残っているのだ。「空室」の札がかかっている会議室のドアをあけると、本当にテーブルにおやつが乗っている。ドーナツと、ワッフル。女の子の好きそうな見せのパッケージが目につく。事務方の女の子に買いに行かせて、いかつい軍部のおっさんどもが食べなかったのだろう。
(直接持ってきてくれればいいのに)
どうせこんなところに置いてあるおやつは、誰も取りに来ないだろう。僕は箱に入ったままのドーナツを研究室に持って帰ろうと思って会議室の中に入る。
「やっぱり、来ると思った」
途端に、聞き慣れた声が耳に入る。
声のした方を見ると、誰もないと思っていた会議室の中に、グラハムの姿があった。スーツにネクタイ。ジャケットは隣の椅子の背中にかけてある。その格好から、会議に出席でもしてたのかな、と一瞬考えた。
それにしても、やっぱり、だって。勝ち誇ったように言われたことには多少かちんとくる。
「おやつがありますよ、って言って回っていたのはきみの部下かい」
むっとしたままの視線でグラハムを睨みつけると、グラハムはくすくす笑いながら立ちあがる。僕の隣まできて、テーブルに置かれたままだったドーナツの箱を持ち上げた。
「誰にも食べてもらえない差し入れが気の毒だっただけだよ。きみに持って帰ってもらえると、嬉しい」
僕の質問を何気なく肯定し、くつくつ笑う声は止めない。なんていやみなやつだ。だけど、心の底から憎いわけじゃない。
(グラハムは、ずるい)
どんなにイヤミを言っても、どんなに人の事を笑っても、きみの綺麗な顔を見ると許してしまう。だから、ずるい。
僕は小さくため息を吐いて、グラハムの手からドーナツの箱を受け取った。ちらりと顔を見ると、自信満々の表情でこちらを見ている。
ああ、きみはきっと、このあと僕が口にする言葉もわかっているんだ。
「グラハム、コーヒーくらいは出すから、今から一緒にこれを食べる?」
きみが甘いものをあまり好きではないのは知っている。特別好きで、ドーナツを食べているのではないと知っている。だけど、きみが僕のコーヒーを好きでいてくれているのも、知っているんだ。だから僕は、きみにどんなに笑われても、文句を言えない。
グラハムは満足そうな顔をしてうん、と頷いた。
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出会ったときはグラハムの事を可愛い弟だと思っていたビリーだけど、いつの間にか完全に立場が逆転し自分が面倒を見られている立場だったらかわいい…ってちょっと思ったのでした。グラハムの手の内で踊らされるビリー。そんなのがすきです。
お話の時系列はガンダム出現前です。
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