あけましておめでとうございます。 2010/01/13_Wed_21:32

なんだか何もしない間にあけてしまいましたね…。

オフ本の通販をやるやる！と言ってやらなくてごめんなさい。
やるやる詐欺。

とりあえず様子を見てサイトの更新をしたいと思います。
そんなわけでお年賀がわりのテキストです。

ハッピーニューイヤー！と小さく、だけど嬉しそうに囁いてグラスを合わせた。かちん、と小さな音が部屋に響く。
ふたりで暮らしているアパートの部屋の中は暖炉を模した暖房器具が、まるで本当にあかりが灯っているように赤く燃えていてきみの顔を照らしている。アルコールにはまだ口をつけていないはずのきみの頬が、暖炉の明かりの所為でなく紅くなっているように見えたので、僕は少しだけそれを見ている目を細めた。
指先からじわじわ伝わってくるようなしあわせの瞬間を、いつまでも、いつまでも、この胸の中に納めておきたい、と心の中で呟く。
今までも、何度も年越しはしてきた。
クリスマスから仕事を休んで旅行をしたり、学生時代は仲間と集まってバカ騒ぎをしたりした。
そんな事すらも平和の上に成り立っていたのだと痛感したあの出来事の後で、僕は漸く本当に、心から安らげるニューイヤーを迎える事ができたのだと思う事ができる。
目の前のきみが優しく微笑んでいるのを見て、心が満たされる思いがした。
「ビリー、」
乾杯をしたグラスを持ったまま、ぼんやりとしている僕の目を覗き込んで、きみが名前を呼ぶ。僕は慌てて笑顔を作って、グラスに口をつけた。
「きみは本当に何でもできるね」
グラスを置いて、目の前に並んでいる料理について感想を述べた。グラハムはクリスマスの時にもターキーを焼いてくれたし、今日もニューイヤーを二人でお祝いしよう、と言ってごちそうを並べてくれた。
ありがとう、と言うときみは「当たり前のことをしたまでだ」と言って、グラスをテーブルの上に置く。
グラスから離れるきみの手の先を、じっと見てしまう。目が離せない。
「……、」
視界がぼんやりと揺れた。
どうしてなのか、考える前に頬を温かい液体が流れていく。
（泣いているのか）
まるで他人事のようにぼんやりとその言葉が頭の中に浮かんだ。他人事なので、視界が揺れている事と泣いている事の接点を見出せなくて涙を自分でぬぐえない。ぼやけた視界の中にきみが不安そうにこちらを見ている顔が見えた。
「だいじょうぶ…大丈夫だよ」
その顔は、どこかで見た事がある。
あの頃。僕が、僕のためだけに戦っていたあの頃に、きみが僕にむけた顔。
「大丈夫だよ」
あの時も、確かそう言った。
何が大丈夫なんて自分でも説明がつかないのに、そう言った。きみは心配そうな、不安そうな顔をして、だけどそのあとすぐに笑顔を見せて。そうか、ならば安心だ。と言って肩を叩いて僕を、僕の意思を尊重してくれた。
そうだ。きみはあの頃も、そして今も心配してくれている。なのに僕は、どこからわいてくるのかわからない、まるで真実味のない言葉できみの気持ちを否定していたんだ。
「……怖いんだ、」
本当は、そうなんだ。
心の中の声が、口から出てきた事に僕は驚く。けれどそれまでもが他人事のように響いて、自分の意思では止める事ができない。
「怖いんだ。……今も、きみがどこかに行ってしまうんじゃないか、って思うと…怖いんだ…」
心臓のあたりが、つんとするような痛みに襲われる。
それは、いつも、いつも、心の中に描いていた未来。
幸せになればなるほど、不安に襲われる。
いつか、あの日のように。恩師を奪われたあの瞬間のように。彼女が去って行ったあの瞬間のように。僕の大事な何もかもが、奪われていく未来。
（……怖い…っ！）
ぎゅっと目を閉じて下を向いた。メガネに水滴がぼたぼたと落ちる。ああ、これは僕の涙だ。そこでやっと自分で自分の流した液体の意味を知る。
（ごめん…グハラム…ごめんね…）
こんな僕に、弱い僕に付き合ってくれて。こんなにも良くしてくれて。なのに信じきる事ができなくてごめん。
「大丈夫だよ。ビリー」
僕が口に出している「大丈夫」とはまるで違うその言葉に、心臓の痛みが少しだけ和らいだ気がした。
顔を上げるときみが微笑んでいる。
濡れてしまったメガネをはずしてきみの顔を見る。きみは笑った顔を少しだけゆがめて、メガネを奪ってナプキンで拭いた。
仕方ないやつだなあ、と小さく呟きながら。










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映画の情報ってどこでどんな風に発表されているんですか？と新年早々素っ頓狂な事で頭を悩ませています。

寒くなるとグラビリのことを考えてあたたかくなりたい。そうなるのです…。