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不器用なビリーが朝ごはんを作ってたらもえ!
って思ったのに朝食を作る描写が全然描けなかった…。




 *****

ある朝、きみよりも早く目が覚めた。
いつもだったら、きみが朝食の用意をしてから僕を起こしてくれるのに、今日は僕の方が先に目覚めた。
夜の中でならまだしも、朝の光の中できみの寝顔を見るなんて事がはじめてだったので、まどのカーテンの隙間からのぞく光の中に浮かぶきみの顔をしばらく眺めていた。
白い肌に消えない傷を持ったきみの顔は、とても綺麗だ。
ルーキーなんて問題にならないね、と僕が心の中で思っていた、出会ったころのきみとまるで同じままだ。
そう言うときみは怒るかもしれない。けれど、きみのその綺麗な顔が僕はとても、とても、大好きだったので、そんな風に変わらないきみの顔は見ていて飽きない。
仕事が休みの朝だったので、こうして寝顔を見ていても誰にも怒られないのだ。これほどうれしい事はない。
出会ったころはこんな風な関係になるとは思っていなかった。朝起きた瞬間から、夜寝るまで。自分以外の誰かと一緒に過ごす事になるなんて思いもしなかったし。それに、その相手がきみになるなんて、もっと思いもしなかった。
すやすやと寝息を立てるきみの目元が、かすかに揺れている。長い睫毛が小さな影を頬に落としている。色素の薄い睫毛が細かく震えるのを見て、ちょっと手を伸ばしてみたくなる。
手のひらを目のあたりにかざすと、きみが少しだけ唸るような声をあげて、それからまた規則正しい寝息に戻った。手のひらにあたる、長い睫毛の先の感触がくすぐったい。
(グラハム…起きないかな…)
小さく笑った声を聞かれないように、口元だけを緩めて子の気持ちを表現した。声は、喉の奥にじっと堪える。
だって、こんな朝はしばらく迎える事ができないかもしれない。こんな風にきみの寝顔をのぞき見る事はしばらくできないかもしれない。
だってきみはいつも僕よりも早く目覚めるんだから。
(もしかして、グラハムも…)
目が覚めたときに、グラハムが僕の顔を覗き込んでいる事がある。もしかしたら、きみもこんな風にしているのかもしれない。小さく笑いながら、目のあたりに手をかざして。触れるか、触れないかぎりぎりのところで、ずっと寝顔を見つめていたいと思っているのかもしれない。
(…だったら、いいのになあ…)
グラハム・エーカーと言う男を知っている人は、大抵の場合彼の事を「乙女趣味」だと言う。大仰に語られる彼の言葉はいつもロマンチシズムに溢れていて、空想的だ。僕はそんなきみをとても個性的で素敵だと思うけれど、大多数の人間はそうは思わないようだ。
それに多分、きみに同じ事を考えていて欲しい、と思っている僕は多分きみよりも乙女趣味だ。
「……ビリー?」
手のひらが、さらさらとしたグラハムのまつ毛に触れた。さきほどまでと違う感触なのは、多分きみが目を開いたからだろう。
「おはよう、グラハム」
綺麗なブルーのひとみをこちらに向けたきみに挨拶をすると、きみは少し照れたような顔をして微笑んだ。
おはよう、と言いながらきみの手が僕の手首を掴む。
「グラハム、」
目覚めた瞬間に、僕が顔を覗き込んでいたのを理解したのか、きみは意地の悪い顔をして僕の腕を強い力で引っ張った。抗えない僕の身体はまたベッドに沈む。
「もう少し、寝ていようか?」
いたずらをしている少年のような瞳で、顔をのぞかれる。僕は少しだけ恥ずかしくなって布団の中に顔をうつむけた。
きみの、笑っている声だけが耳に届いた。










>>>
朝食の話はまた別で書きますよ。
…なぜだ?
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