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グラハムとビリーが二人でいるだけで幸せなんです。
かわいそうな人です(笑)
かわいそうな人です(笑)
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気がつくと、時計が次の日の時間を指していた。少しお腹が空いたなあ、と思って仕事部屋にしている自室を出ると、真夜中なのにまだリビングの電気がついていた。
「……やあ、仕事は終わったのかい?」
テレビをつけてソファに座っていたグラハムがこちらを振り返る。テレビには大昔の日本の時代劇が写っている。そう言えば、どこからかディスクを手に入れたのだと言っていた事を思い出した。丁度良いところなのだろう。こちらを振り返ったのは一瞬で、またすぐにテレビ画面に視線を戻した。
何か食べるものでも探そうと思ってキッチンに入ると、グラハムが作ったのであろう夕食に、きちんとラップがかけてある。
「グラハム、これを貰ってもいいの」
キッチンから声をかけると、少し遅れて「いいよ」と返事があった。どうやら自分が食べる分を作った時に、一緒に調理しておいてくれたらしい。皿に盛ったサンドイッチと、オレンジジュースを持って、グラハムが座っているソファの方に向かった。
テレビには大立ち回りを演じている昔の着物を着たサムライが写っている。ちらりとグラハムの横顔を見ると、わくわくした少年のような表情でテレビにクギヅケになっている。隣に来た僕の事はまるで無視だ。
(ああ、でもさっきまでは反対だったな…)
自室にこもって仕事をしているときは、僕も周囲が見えなくなる。今日も、一緒に暮らしているはずのグラハムと最後に会話をしたのが多分お昼だ。わりにまめな性格をしているグラハムは、おそらくこの夕食を作った時に一度声をかけてくれているだろう。僕はそれに今まで気付かなかった。
(悪い事をしたな…)
サンドイッチを一口かじって、オレンジジュースを飲んだ。美味しい、と小さくつぶやいたけれど、その声は多分グラハムには届いていない。だって、目を輝かせてテレビを見ている。まるで、テレビを初めて見た子供みたいに。
あんまり楽しそうに見ているから、僕もそんなきみを隣で見ていて楽しくなった。
子供みたいだと思ったら、食事をしない僕を母親みたいに叱りつけて、朝目が覚めた時には優しい恋人になっているきみが、隣に居てくれて嬉しい。
「ビリー、明日は早いのか」
テレビに視線を向けたままで、聞いてくる。そんな風に聞いてくるのは、まるで父親みたいだ。そう思って、ばれないようにこっそり笑った。
「昼頃に、出掛けるよ」
「そうか。ちゃんと寝た方が良い」
派手な場面が終わって、エピローグを流しているテレビから視線を離した。こちらを向いて、試験な顔をして親のような事を言う。年下癖に生意気な奴だ。だけど僕はそんなきみにおんぶにだっこで、なんでもやってもらっているので文句は言えない。
「はあい」
サンドイッチを頬張りながら間延びした返事をする僕に、きみは仕方ないなあと言いたいような溜息を吐いて呆れた顔をした。
そんな顔も、実は嫌いじゃないんだ。だから呆れた顔をしたって無駄だよ。
呆れた顔を見て僕がくすくす笑うので、きみはへそを曲げてしまったのか背中を向けてしまった。
残念ながら、僕はその背中も好きだ。小さく笑ってその背中に寄りかかりたいのを我慢した。だって寄りかかってしまったらそのまま眠ってしまう。そうしたらきみはきっとまた呆れるだろう?
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グラハムに寄りかかるビリーを見たい。
願望。
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