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昨日の続きのような…



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風邪で寝込んでいるときに、ぼんやりとした頭の中に昔のできごとが蘇ってきた。
小さなころ、夏休みのたびに二ヶ月間ほどおじさんの家で過ごした。
おじさんの家、と言ってもおじさんも別荘として使っている日本の家で、山の中に作った平屋の家は昔づくりで夏でも涼しかった。
身体の弱かった僕は夏なのに良く風邪を引いて、その度に離れで一人、寝かされていた。
熱にうなされながら、ちょうどそんな事を考えていた。
夢と現の境目で、目をあけるときみの金色の髪の毛がゆらゆら揺れているのが見える。
(グラハム……)
夢の中で、僕は小さな子供だった。開け放した窓の外に、小さなころの君の姿が映る。半袖のシャツを着て、短いズボンをはいて、その姿を写真か何かで見ていたのかもしれない。それとも、本当に小さな時の記憶なのかもしれない。
寝ている僕を見るきみの顔は、瞳に不思議そうな色をやどしている。
僕は布団の中から手を伸ばして、精一杯きみに頬笑みかける。きみは、それを見て笑った。
「ビリー、起きているのか?」
小さな子どもの姿をしていたきみから、今のきみの声が聞こえる。目の前の姿が一瞬にしておとなになって、心配そうな顔をしているのが見えた。
「……いま、起きたよ」
視界がぼやけているのは、メガネをはずしているからだ。きみがこちらを心配そうに見ている、と思ったのはもしかしたら僕の幻想だったのかもしれない。
「喉は乾いていないか?汗は?」
ぎし、とベッドのスプリングが揺れたのは、ベッドにきみが腰かけたからだ。電気を落としているので部屋の中は暗い。ずっと見ていている、と思っていたきみの姿は黒い影にしか見えない。
「……喉が…」
こんなときくらいは甘えてもいいのかもしれない。そう思った僕は、喉が渇いているときみに言いかけた。言葉が最後まで出てこなかった理由は、冷たい水が喉に流れ込んできた瞬間にわかった。
ごくん、と喉を上下させて、暗闇の中のきみの瞳を見つめる。闇に慣れてきた目が、きみの綺麗に光るブルーの瞳の光を捉えた。
「……夢を見たよ」
「どんな?」
「きみが……」
きみが、小さな少年だった。眠っている僕の顔を覗き込んで、不思議なものを見る視線で見ていた。
(あの頃に出会っていたら…)
もしも、を考えるとキリがないけれど、あの頃のきみに出会っていたら、僕らはもっと違った関係になっていたかもしれな。もっと、違った未来があったかもしれない。
そんな事を考えて、言葉を続ける事ができなくなった。
「ビリー?どんな夢を見たんだ」
優しいきみの声が耳をくすぐる。
僕はそっと目を閉じて、近くにあるきみの身体に抱きついた。
一瞬だけ。
「風邪が、伝染るよ」
そっと抱きしめた背中をすぐに離すと、きみが暗闇の中で苦笑した。そうだな、と小さな呟きな空気を揺らして、僕の耳に届く。
そのままベッドに横になると、きみがサイドボードに水を置いて部屋を出ていく音が聞こえた。
(ベッド……)
今、僕が使っているベッドはきみと使っているダブルベッドで、僕が占領するときみが眠れない。そう思いながら目を閉じた。
(ごめんね…)
きっときみは今からソファで寝るんだろう。ごめんね。明日は一緒に寝よう。いつもみたいに。










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昨日の続きのような、そうでないような。
二期後にふたりで同棲をはじめる話を書きたい。で、このはなしは同棲してできあがっている設定!(笑)
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