夢を見ている… 2009/02/10_Tue_22:47

グラハムとビリーにたいして夢を見ているのはわかっている…わかっているんだ…。

さたさんが全国で本を買ってきてくれたらしいのでそれだけを楽しみに一週間生きていこうと思います（笑）いつもありがとうございます！（私信）

作戦行動開始のほんの少し前。
ソレスタルビーイングが宇宙に姿を現したと聞いてから、まるでクリスマスプレゼントを空けるのを待っている子供みたいな顔をしたきみと少しだけ話をした。
そもそも、どうしてきみが宇宙に上がってくるのだ、と僕を見て辛辣に言い放ったのはグラハムなのに、ここまで来るとそんな事はどうでも良くなったらしい。戦闘に出る前の高揚した気持ちをそのまま表情に出して、視線は遠いところを見ている。
（…それくらいが、きみらしいけど）
僕とふたりきちの時は、ミスター・ブシドーでいるのをやめたらしい。仮面を外して妙にリラックスした姿できみは僕の目の前に座っている。僕はまだモビルスーツの最終チェック待ちをしていて、要するに仕事中なのだけど、グラハムはもとからそんな事に構わない性格をしている。
僕は何年もしないうちに変わってしまったのに、きみはどこにも変わりがない。その顔についた、醜い傷以外は何も。
分かっていて、それを目にするとどうしても視線を外すことができない。そして、聞いてしまう。
「……その傷、治してもらわないのかい」
データが送られてくるパネル表示から少しだけ視線を外してグラハムを振り返る。グラハムは、何の事だ。と逆に聞いてくるように不思議そうな顔をしている。わかっているくせに、知らないふりをする。きみの性根はねじ曲がっている。
僕がちさく笑ったのがばれたのか、グラハムはむっと顔をしかめて見せた。
「名誉の負傷だ。治さんよ」
めいよのふしょう、だって。呆れた顔で視線をパネルに戻す。
だけど少し嬉しいんだ。きみがこうして素顔を見せてくれるのは僕だけだって知っているから。名誉の負傷だなんて言うのも僕にだけ、だから。
こうして、二人で過ごしていると今までの事が嘘みたいに思えるよ。
ここはユニオンの研究室で、きみはいつもみたいにモビルスーツの整備を待っていて、そうしてパイロットの仲間に誘われているんだ、って顔をしかめてみせる。そんな昔に戻ったみたいに思えるよ。
（まあ、ここは宇宙だけどね）
もう一度グラハムの方に視線を向けると、グラハムの視線は微笑んでいた。柔らかく、優しい光をたたえて。
「……これが終わったら、一緒にどこかに行こうか」
きみの優しい視線を見て、捕らわれた。
夢を見ているような感覚が醒めないまま、勝手に口が動く。
「どこに？」
きみは、僕の言葉を止めない。
「どこでも。…以前クリスマスに行ったニューヨークでもいいし、もっと南の田舎でもいい」
「そこで何をするんだ」
きみの声が、少し笑っている。僕も、ばかな事を口走っているってわかっている。
「何もしないよ。…何もしないけど、一緒にいたいんだ……」

 

僕は束の間の夢を見る。
麦畑に囲まれた田舎の一軒家で、僕はパソコンの前に座っている。自宅でできる小さな仕事だけを請け負って、生活をするだけの給料を稼ぐ。
きみはパイロット以外の仕事なんてしたことはないと思うけど、まあそれならそれで仕事なんてしなくていいんじゃないのかな。オンボロの複葉機を買ってあげるから、それで時々空に飛び立てばいい。敵も、重力も、スピードも、何も関係ない空の上。
夜は二人でコーヒーを飲みながら読書をしよう。夜が更けるまで話をしよう。

 

感傷的になると涙があふれるかと思ったのに、そんなものは一粒もわいてこなかった。ただ、泣く寸前のような胸の締め付けだけが永遠に続く。
「約束しよう。ビリー・カタギリ」
きみの声が、背中に響く。僕は恥ずかしくて顔をそちらに向けることができなかった。
だけどきみは僕の背中に腕をのばして、抱きしめてくれた。
「約束しよう」
耳元でささやく声は、優しかった。
手が、小さく震えた。
それは、必ず帰ってきてくれると言うきみの約束。僕のところに帰ってきてくれると言うきみの約束。
それが、とても嬉しくて、そして悲しかった。





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ごちゃっとしてまとまらないものをまとまらない文章にしてしまったので反省して、もう何日か書き続けてちゃんとしたものにしたいです。未来に向っての豊富。