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グラハムとビリーに関するドリームを製造しているんです。もういいんです。



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その仮面を最初に見たとき、そう言えばきみは随分そのデザインに惹かれていたな、と思いだした。
「どうだ?」
いかにも「似合うだろう?」と言うような視線で僕を見る。その時の僕は、できれば傷を負ったきみの顔を見たくなかったので、その仮面をつけた顔を見ることさえ苦痛だった。けれど、きみのその自信満々の表情をると、思わず微笑まずにいられなかった。
「似合うね」
そう返事をすると、きみは満足そうに微笑んだ。
その仮面のデザインは、僕の実家にある甲冑についていた面当てにとても似ている。歴史の教科書に載るほどの昔、日本の武士がつけていた甲冑と面当て。レプリカではあるけれど、その甲冑が実家に置いてあって、きみはそれと最初の対面を果たした時にとても興味深そうに見ていた。
まさか、傷を隠すのにその仮面をつけるとは思わなかったけれど、それは意外にも金髪で碧眼のきみにとても似合っていて、僕はそれで微笑んだんだ。
特殊金属で作られた仮面は、ヘルメットをかぶった時に邪魔にならないように、口を覆っている部分は脱着可能になっている。精巧な作りのその仮面を、きみはわざわざ顔から外して僕に見せてくれた。モビルスーツを同じ素材でできているのか、軽く、それでいて頑丈な金属でできている仮面は、僕の手のひらに冷たく感じられた。
きみに、こんなものをつけさせたのは僕だ。僕の、未熟で傲慢な自信がきみを傷つけた。
傷ついたきみの顔を見るのは忍びなかったけれど、それを見るのが僕の役目だと思ってきみの顔から視線を離さなかった。
きみに初めて会った時、きみの顔をとても綺麗だと思った。その綺麗な顔についた傷も、今は綺麗だと思える。
(僕の罪も…きみは許してくれるのか…?)
手を伸ばしてきみの傷をなぞる。きみはまるで手のひらのを感触を味わうようにそっと目を伏せた。長いまつげが影を作る。
そんな、綺麗な顔に傷をつけたのは僕だ。こんな仮面をつけさせたのは、僕だ。
(ごめん…ごめんね、グラハム…)
心の中の声は、だけど口には出さなかった。それを言えばきっときみは傷つく。僕以上に。
手に持っていた仮面を、きみに手渡した。
「その仮面。懐かしい気持ちになるよ」
どうしてだろうね、と言いながら笑った僕の言葉の意味を、きみは寸分の違いもなく言い当てて見せた。
「覚えているさ。きみのところで見た甲冑がつけていた」
柔らかく、微笑むきみ。美しい笑顔。
「きみと見たものは、忘れない」
優しい声に、心が揺れた。
誰も、きみの気高さを汚すことなんてできない。僕はその時確かに思ったんだ。
僕が背負う罪の意識なんて、きみの前では取るに足りないことだ。それは多分、僕が凡人だからだ。
(嬉しい、)
きみが、高貴な人でいてくれてよかった。何にも汚されることのない人でよかった。
仮面をつけたきみの顔に、もう一度触れる。冷たいだけだったはずのその仮面に、少しの温かさを感じる。それは僕の勘違いかもしれないけれど、その時は確かにそう感じたんだ。
(かみさま…)
そのときはじめて、神様に願った。
(かみさま、どうかこの人だけは、汚さないで、)





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軸が完全にブレているのは途中から気付いていたのですが、もういいんです…。ちょっとずつ修正していって地球の自転に追いつきたい。
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