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滝修行グラハム。



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朝から今日は滝に打たれに行ってくる、と聞いていたので昼食ごろには帰ってくるのだろうなあ、とぼんやり考えていたら、時計が14時前になっても帰ってこなかったので、あわててその「滝」のある場所にきみを迎えに行った。
どうせ熱中し過ぎて時間も忘れているんだろう。太陽はもう南中高度を通過して西に傾く様子を見せているのに、きみは多分滝に打たれてそんな事にも気付いていない。
そんなところだろう。
とりあえずそのへんにあった大きめのバスタオルをいくつか掴むと、僕は滝に向かった。
そこはおじさんの家の近くにあって、近所の小さい子供が遊ぶ小川の上流にある。僕も幼いころに何度も遊びにでかけて、何度もはまった小川だ。幼いころから運動が得意な方ではなかった僕は、その川にはまって溺れた事も何度かある。
なので、実は近寄りたくない場所の一つでもあるんだけど、グラハムが帰ってこないので仕方ない。一人で食事をするのは、思っているよりもさみしいものだ。それにいつまでも帰らない彼を心配もしていた。
彼の身体はまだ本調子ではない。
正確に言えば、ユニオンでエースパイロットとして活躍をしていた頃を本調子だとするのであれば、この先ずっと本調子に戻ることはないだろう。それほどの傷を、彼は抱えている。なのにそれでも身体を鍛え、少しでもあの頃の自分のアベレージに近づけようと努力をしている。
僕には、彼の努力が目に痛く映っている。
昔から、彼の背中を見るのは好きだった。真っ直ぐで迷いがなく、いつも僕を勇気づけ、彼こそが僕の中のナンバーワンだといつも思っていた。
そんな彼が受けた傷の事を、僕がなんとも思っていないわけがない。本当なら、眼をそむけて、きみとも一生顔を合わせたくない。それくらい、思っていたのに。当事者であるグラハムが、そんな事は全く気にしていないから、傍に居てくれと言ってくれたのだ。
だから、こんな風に出かけてしまって帰らない彼を探しに行くのは僕の役目なのだ。
彼は、居た。
滝に打たれるのはやめにしたのか、濡れた身体のままで河原の岩の上に腰かけている。少しだけ丸くなった背中が、濡れている衣服に包まれていつもよりも小さく見えた。
(グラハム……)
一瞬、声をかけるのを躊躇った。
差し出した手が空中で止まったような気持ち。
そんなきみに、声をかける権利が僕にはあうるのか。その背中に呼びかける権利が僕にあるのか。
躊躇していた僕の気配に、きみは先に気がついた。振り返って、小さく微笑む。
僕は彼の傍に駆け寄って、持っていたバスタオルを頭からかぶせた。
「……風邪ひくよ」
少し呆れたように口にすると、バスタオルの下からきみの目が僕を見上げた。
「心配してくれているのか。ありがとう」
昔から変わらない、不遜な態度。僕が心配しているって事が、当然だとでも言うような態度。
僕は瞬間、むっとした顔を作ったけれど、すぐに嬉しくてたまらない、自分の気持ちに気付く。
きみは、
きみだけは、変わらないで。
たとえどんなに激しい戦いがあっても、理不尽な目にあわされても。きみがきみで居てくれれば、僕は進むべき道を見失わないで済むような気がするんだ。それは僕のわがままかもしれない。だけど…。
そっと手を伸ばして触ったきみの髪の毛は冷たかった。本当に風邪をひいてしまう、と急かすと、きみはやっと立ち上がって僕の手を握って歩きはじめた。
強くもなく、弱くもない、きみの握力。ただその手が冷たくて、僕の手のひらまで氷を掴んだようになってしまった。
(ああ、僕がもう少しだけ温かい人間だったらなあ)
きみを、温めることもできたかもしれないのに。










>>>
これを書いているときに、グラハムが間違いすぎてお百度とか踏みに行ったらどうしよう!!って考えてしまった。くわばらくわばら。
今日の放送が怖すぎて若干おなかが痛いです。どうしてこんなに緊張しているのか…。とりあえず見てから友達と会議です。会議(笑)。
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