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ちょっとした笑い話です。
おじさんの家にグラハムが下宿をしていて、ビリーが面倒みていたらいいじゃない、と言う妄想。
おじさんの家にグラハムが下宿をしていて、ビリーが面倒みていたらいいじゃない、と言う妄想。
*****
最近、自宅にちょくちょく宅配が送られてくるようになった。僕の名前でそれらは送られてくるので、家人は僕のものだと思って、時々その謎の宅配便に白い目を向ける。
僕もその中身については、白い目を向けたい。そんな気持ちを押さえて、離れで暮らしているグラハムの所まで宅配便を持って行く。
「グラハム、きみはまた何か買ったのか」
オークションだったり、店舗からの配送だったり、送り主はいろいろだったけれど、とにかく購入しているのは全部彼、グラハム・エーカーだ。
修行、と称して僕の叔父の家に上がり込み、日本風家屋の離れの一室を占領している。僕も彼の面倒を見るのに同じ離れで寝起きをしているけれど、三日もするとグラハムの規律正しすぎる生活に付き合いきれなくなって、今は気が向いたときだけ食事を一緒にしたり、話し相手になったり、とにかく世話を見ると言うよりも、ただのだらけた同居人になってしまった。
そんな僕の仕事の一つに、この宅配物を玄関で受け取って離れにまで持ってくる、と言う事項が含まれている。
最初の頃は興味もあったけれど、今となってはただ呆れるしかない。それと言うのも、宅配便の段ボールから出てくるものがほとんど同じような小説の本だったり、昔の映画の録画映像だったりするのだ。以前はあまりに古すぎてプレイヤーが見当たらず、結局プレイヤーまで購入していた。
軍人をしている時にはあまり派手に遊んでいないようだったけれど、彼の高給はそのまま手つかずでほとんど彼の預金口座に残っていたらしい。とにかく、グラハムは手当たり次第に「武士」に関しての資料を買いあさり、現在武士道の研究真っ最中なのだ。
そして今日も届いたダンボールの中から出てきたのは、真田太平記12巻セット。中古品がオークションに出ていたのだ。これは珍しいぞ!とグラハムが喜々としてそれを僕の目の間に出して見せる。
正直なところ、そんなものには興味がなかったので彼と一緒に小説や映画にテンションが上がったのは最初の頃だけで、今は何を見ても全く感動しない。
ただ、喜んでいるグラハムの顔を見るのは少し嬉しい。
ああそう、良かったね、ときみに話を合わせるように頷く僕は、まるできみの保護者のようだ。
「……ほら、もうすぐ剣客商売もはじまるよ。この本片付けて」
畳の和室に広げられた荷物を指して注意をするところなんか、本当に彼の母親のようだ、といつも思う。
グラハムは素直に頷いて、一冊ずつ大事そうにダンボールに仕舞いこんだ。
最近はなし言葉もだんだん武士らしくなってきている。「武士らしい」と言うのが正直どんなものなのか僕にも想像できないけれど、たぶん今のグラハムのようなものを指すのだろう。
(……それできみの気が済むのなら、付き合うけどね…)
本を片付け終えたきみが振り返った。今から始まるテレビ番組を一緒に見よう、と誘ってくる。まるで、子供だ。
笑うと、きみは少し不満そうな顔をして僕を睨みつけた。
でも、きみがそんな顔をしていても僕は嬉しいし、とても楽しい。
できればこんな時間がずっと続けばいいな、と思っている。思っているけど、こんな時間がそう長く続かないことも僕は知っている。
きみの求める武士道の先には、ガンダムが在る。それがなくならない限り、こんな時間にはいつか終わりが来るのだと、僕は知っている。
だから、少しでも長くきみと一緒に居たい。どんなに呆れるような出来事に出合っても、それでも僕はきみの傍に居たい。
>>>
真田太平記も、剣客商売も、池波正太郎先生の著作です。
これはまあ自分の趣味なだけなんですが。グラハムは黒沢明とかもすきそうだな…と思います。今夜は七人の侍をビリーと一緒に見ればいいじゃないの!
僕もその中身については、白い目を向けたい。そんな気持ちを押さえて、離れで暮らしているグラハムの所まで宅配便を持って行く。
「グラハム、きみはまた何か買ったのか」
オークションだったり、店舗からの配送だったり、送り主はいろいろだったけれど、とにかく購入しているのは全部彼、グラハム・エーカーだ。
修行、と称して僕の叔父の家に上がり込み、日本風家屋の離れの一室を占領している。僕も彼の面倒を見るのに同じ離れで寝起きをしているけれど、三日もするとグラハムの規律正しすぎる生活に付き合いきれなくなって、今は気が向いたときだけ食事を一緒にしたり、話し相手になったり、とにかく世話を見ると言うよりも、ただのだらけた同居人になってしまった。
そんな僕の仕事の一つに、この宅配物を玄関で受け取って離れにまで持ってくる、と言う事項が含まれている。
最初の頃は興味もあったけれど、今となってはただ呆れるしかない。それと言うのも、宅配便の段ボールから出てくるものがほとんど同じような小説の本だったり、昔の映画の録画映像だったりするのだ。以前はあまりに古すぎてプレイヤーが見当たらず、結局プレイヤーまで購入していた。
軍人をしている時にはあまり派手に遊んでいないようだったけれど、彼の高給はそのまま手つかずでほとんど彼の預金口座に残っていたらしい。とにかく、グラハムは手当たり次第に「武士」に関しての資料を買いあさり、現在武士道の研究真っ最中なのだ。
そして今日も届いたダンボールの中から出てきたのは、真田太平記12巻セット。中古品がオークションに出ていたのだ。これは珍しいぞ!とグラハムが喜々としてそれを僕の目の間に出して見せる。
正直なところ、そんなものには興味がなかったので彼と一緒に小説や映画にテンションが上がったのは最初の頃だけで、今は何を見ても全く感動しない。
ただ、喜んでいるグラハムの顔を見るのは少し嬉しい。
ああそう、良かったね、ときみに話を合わせるように頷く僕は、まるできみの保護者のようだ。
「……ほら、もうすぐ剣客商売もはじまるよ。この本片付けて」
畳の和室に広げられた荷物を指して注意をするところなんか、本当に彼の母親のようだ、といつも思う。
グラハムは素直に頷いて、一冊ずつ大事そうにダンボールに仕舞いこんだ。
最近はなし言葉もだんだん武士らしくなってきている。「武士らしい」と言うのが正直どんなものなのか僕にも想像できないけれど、たぶん今のグラハムのようなものを指すのだろう。
(……それできみの気が済むのなら、付き合うけどね…)
本を片付け終えたきみが振り返った。今から始まるテレビ番組を一緒に見よう、と誘ってくる。まるで、子供だ。
笑うと、きみは少し不満そうな顔をして僕を睨みつけた。
でも、きみがそんな顔をしていても僕は嬉しいし、とても楽しい。
できればこんな時間がずっと続けばいいな、と思っている。思っているけど、こんな時間がそう長く続かないことも僕は知っている。
きみの求める武士道の先には、ガンダムが在る。それがなくならない限り、こんな時間にはいつか終わりが来るのだと、僕は知っている。
だから、少しでも長くきみと一緒に居たい。どんなに呆れるような出来事に出合っても、それでも僕はきみの傍に居たい。
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真田太平記も、剣客商売も、池波正太郎先生の著作です。
これはまあ自分の趣味なだけなんですが。グラハムは黒沢明とかもすきそうだな…と思います。今夜は七人の侍をビリーと一緒に見ればいいじゃないの!
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