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ビリーとグラハムのアロウズでの再会直後。
このへんの話を考えるのが楽しいです…。
不幸なビリーが好きなのかな…?



 *****
久し振りに顔を会わせた時、彼は自嘲気味に笑って
「遅くなったけど、帰ってきたよ」
と言った。
照れているのか、視線を合わせてくれない彼を見て、両腕でその身体を抱きしめたい、と心の底から思った。
懐かしい気持ちと、きみの心もとない笑顔の所為だ。
あの時、その瞬間に、そうしておけば良かった、とすぐに後悔した。
アロウズへの参加をやんわりと断り続けた彼の生活の背景に、どうしても面倒をみなければならない友人がいるとはその当時から聞いていた。
もういいのか、と聞くと、「うん」と言ってうつむいてしまった。なんでもない風を装っていても、とても気に病んでいる。そんな雰囲気が漂っている。
彼はとても良く笑う人だった。
子供みたいに無邪気な笑顔を見せる時もあったし、自信満々に微笑む時もあった。年相応に見えるときもあれば、随分幼い印象を持つ時もあった。
とにかく、彼は過去、私の前でそんな風に何度も何度も表情を変化させていたのに、今はそんな雰囲気が消えてしまっている。
表情の消えた彼が、私に合わせて、それとも気を使って、一生懸命に微笑もうと、普通どおりに見せようと、そうしている雰囲気がある。
(……なにか、あったのか…)
離れていて、知らない間に何かあったのだろう。それを問いただすことは簡単だけれど、彼の傷を抉ってしまうことだけは避けたい。
「ビリー、きみの友人はもういいのか」
なるべく、さりげなく聞いたつもりだ。それでも少し怖くて、彼の顔を見ながらは言えなかった。彼に完全に背中を向けた状態で、座っているビリーに聞く。
背後の気配が少しだけ動いた。
「ああ…うん…」
顔をあげたらしい。
必死に笑顔でも作っているのだろうか。それを見れば自分も傷ついてしまうかもしれない。悲しそうな顔をしているのは見たくない。そんな思いをもちながらも、質問に答えてくれた彼にずっと背中を見せているわけにもいかずに振り返った。
ビリーは自分の前髪を少し触りながら、困ったような顔をしていた。
ああ、その顔は昔何度も見たことがある。
いつもの、彼の表情だ。
「アルコール中毒の人でね。手のかかる人だったけど、どうしても見て見ぬふりができなかったんだよねえ」
こちらにまっすぐに視線を向けてくれないのは、なぜだかわからない。けれど、彼の周囲にできあがった空気のバリアは私の力ではとても破れそうにない。
ビリーは少しだけ笑って、また顔を上にあげた。
「歩く奈良漬けみたいんだったんだよ。ずっとアルコールのにおいがしていて、」
「奈良漬け?」
「ほら、きみ一度食べたじゃない。おじさんちで。ひとくち食べて、吐き出したあれ」
ふふ、と声をたてて笑った。
その時、やっと彼の視線を捕えることができた。ビリーの瞳は、少しだけ不安の色を浮かべている。表情は笑っているのに、どうしてだろう。
「……大変だったんだな」
「そうだね。大変だったよ」
もう、部屋がずっと酒臭くてねえ。身体を揺らして笑っている彼は、昔のように楽しそうには見えなかった。
とても、悲しそうに、さみしそうに、見えた。
今、この腕を伸ばして彼の身体を抱きしめたらどんな風に思われるだろう。
再会してすぐ、そうしておけば良かった。
今更、感情のままに行動なんてできない。
動かしたくても、持ち上がらない手で、ぎゅっと拳を作った。どこにも向けようがない、手を。





>>>
スメラギさんの事を「歩く奈良漬け」と言ったら、そんなかわいい呼び方をするな、と言われた。奈良漬けは別にかわいくないとおもう…(笑)
ってゆーか、グラハムは早くビリーを抱きしめてあげればいいと思います!!!!
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