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おじさんのところで一着くらいは作ってもらっているよね…(笑)と、思ったのです。
だっておじさんは甥っ子に甘そうだから!!



 *****
おじさんの家に居候をしている時に、きみはどうしてもあれが着たい、と子供のように駄々をこねて着物を一着仕立ててもらっていた。どうせ一人では帯の一つも結べやしないのに、そんなものを作ってもらってどうするんだ、と僕は内心呆れていたけれど、それを貰ったきみは本当に子供みたいに喜んでいて、おじさんはその顔を見て驚いていた。
きみは顔にも、身体にも、傷をたくさん持っていたけれど、純真な心はただの一度も傷ついたことはなかったと思う。
たとえ、数々の戦いの中で戦友を失い、部下を失い、自分自身さえも見失いそうになっても、きみのその気高い魂はそのままであり続けていたのだと、僕は思っている。
件の着物を、きみはどうしても一人で着るのだと言い張ったけれど、初めて見つ衣服に四苦八苦するのは目に見えていたので、僕はその場に同席することにした。
「きみは、良くここに来ていたのか」
着物の合わせを反対にしようとするので、僕が慌ててそれを止めた。仕方ないので君の手を持って、こちらがこう、と本当に子供に教えているような態度でそれを教えてあげた。きみはそのいちいちに感心して、きみはすごいなあ、なんて暢気な事を言う。
そんなグラハムの口から出てきた質問は、ごく単純な質問だった。実家のある場所からも、通っていた学校からも遠いおじの家で、僕が知った顔をして中の案内をしたり、着物を着るのに慣れていたりするので、聞きたくなったのだろう。
「学生のときにはね、夏休みごとに来ていたよ」
「それは、うらやましい」
僕の少しうんざりとした物言いが聞こえていなかったのか、きみは素直に「うらやましい」なんて言う。
「僕は外に出て遊びまわるタイプの子供じゃなかったから、別に楽しくも何ともなかったよ」
少しため息交じりでそう言って、グラハムの腰に帯をまわした。結ぶ所くらいは自分でやってくれ、と一度だけ結び目の手本を見せてやる。グラハムは一度見ただけでそれを器用に再現してみせた。
「外の川、見たろ?泳いで来いとか、魚釣りに行くぞとか、僕はもううんざりだったんだ」
それでもこの家は、少しは好きだった。真夏でも部屋の中は涼しかったし、読書をするには静かな環境がとても快適だった。
そんな事を思い出して自分でも(現金だな)と思って笑ってしまう。小さく笑ったのがきみにばれて、顔を覗きこまれてしまった。
「そうか、ではそこに案内して欲しいな」
うんざりだ、と言ったのが聞こえていないはずがないのに、きみの瞳はきらきら輝いていて、僕を圧倒した。
着物を着て、川まで散歩に出かけて、何が楽しいのか僕にはまるで理解できなかったけれど、グラハムは楽しそうに笑っていた。少年のように。
(……もし、)
彼の横顔を見て、ありえない仮想の現実を夢見てみる。
もし、彼ともっと幼い時に出会っていたら。ここで、毎夏きみと一緒に過ごしていたら。
僕はもっともっと、この場所が好きになったかもしれない。
(今からでも、遅くないかもしれないけど…)










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このあと、グラハムは滝修行用の白い着物も一着プレゼントされます。(規制品)
ビリーは着物似合いそうですよね、ってそれはあの髪型だから…?と自分で自分に突っ込みを入れてしまった(笑)でも身長もあるしかっこいいと思うんだけどなあ。
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