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時間泥棒に大事な時間を持って行かれました。
敗北した!

グラビリ書いたので置いておきます。



 *****
いつもだったらすでに自宅に帰っている時間帯だ。気分転換に研究室の外にあるディスペンサーで紙コップにコーヒーを注いでいたら、後から名前を呼ばれた。
「カタギリ、」
聞き覚えのある声に振り返ると、ダウンのコートを着たグラハムがそこに立っている。どうやら彼は今から帰宅するらしい。
「やあ、今帰りかい?」
ディスペンサーから紙コップを取り出してから、聞いた。彼は首を縦に振って、僕が持っているコーヒーに視線を向ける。
「きみは今日、泊りなのか」
少し呆れているような声色なのは、暫く休みを取っていない僕の勤務形態を知っているからだろう。暇なときはとびきり暇になるのに、今は新型の武器があがってきて、調整作業をしているので帰宅もできないくらいに忙しい。
「でも、今のデータ取りが終わったら休めるから。今日あと少し頑張れば明日の午後からは自宅でゆっくりできるよ」
紙コップのコーヒーから立ち上る白い湯気の向こうのきみに、笑顔を向ける。きみは苦笑して、さっき僕が紙コップをセットしていたディスペンサーに同じように紙コップを置いた。スイッチを押して、コーヒーを入れる。
なんだ。帰るんじゃないのか。
グラハムの行動を見て、僕も少しだけ休憩時間を延長することにした。休憩所の少し大きめの窓に寄って濃紺の空を見る。冬になり始めの空には、透き通る空気の向こうに小さな星まで輝いてみえた。その窓に、きみの姿が映る。
「ちゃんと食べているのか」
まるで母親のようなセリフを吐いて、僕の隣に立った。身長こそ僕の方が高いけれど、身体の厚さはまるで違う。真っ直ぐに伸びた背中を見ると、僕はきみのそんな姿にコンプレックスを感じずにいられない。
窓の夜空に僕らの姿が映るので、僕は窓に背中を向けて寄りかかった。きみは、そのまま空を見ている。
「食べてるよ。まるで、母親みたいだ」
ふふ、と笑ってコーヒーに口をつけると、きみは笑われたことが心外だ、と言うような顔をして僕を振り返った。
「心配しているんだ」
「わかっているよ」
混ぜっ返して茶化した僕に、きみはあくまでも真剣に返事をする。そんな真面目なところも、少し笑えるのはどうしてだろう。
僕は再び視線だけ夜空に戻して、きみが飛び立つ姿を思い描いた。
きみは、誰よりも格好良くて、誰よりも僕の視線を奪う。きみのそんな姿を見た時の僕の気持は、まるで恋を覚えたばかりの少女のようだ。胸がときめいて、心拍数が上がる。期待と不安の混じった、あの切ないような感情は言葉で言い表すことができない。
(そう言えばきみも…)
モビルスーツに乗ると、そんな気持ちになると、いつか告白してくれたことがあった。女性に感じることのない興奮が、そこにはある。至極真面目な顔をして言ったきみを僕は笑ったけれど、たぶん僕がきみの背中に感じている気持ちはそれと似ているような気がする。
「…じゃあ、もう少し頑張ってくるね」
コーヒーを飲み終えた紙コップを見せて、その場を去ろうとする。グラハムは僕に片手あげてさよならの合図をする。
その顔は、笑っていた。
きみの、その顔を見るのが好きだ。とても、好きだ。
(だから、もう少しだけ…頑張ろう)
自分が好きで始めた仕事だけれど、ここできみに出会ってはじめて僕は自分の生きる道を見つけた気がする。
腕を上げて、大きく伸びをした。固まった関節がぱきぱきと乾いた音を立てた。





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自分の恋に自覚のないビリーと、そんなニブチンのビリーの事が大好きなグラハム、と言うのが好きなスタンスです。グラハムの直球がストレートすぎてビリーはいつもそんな恋のサインを見逃してしまえばいい…。
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