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寒くなるとこう…べたべた、いちゃいちゃしているものが見たくなりますなあ。
自分では書けないので、よそに読みに行ってるんですけど…。



 *****
窓の外を見ると、白い雪がちらちらと舞っている。外は随分風が強いようで、データ収集のために飛行しているフラッグに何事もなければいいな、とふと考えた。
(…もうすぐ、帰ってくるかな)
休憩のつもりで出てきたけれど、急に思いついていてもたってもいられなくなった。何も言わずに研究室を出てきたので、きっとばれたら怒られるだろう。
(まあ、いいか)
歩く方向をくるりと変えて、飲みかけのコーヒーを喉に一息に流し込んだ。
窓の外はやっぱり雪が降っているようだったけれど、部屋の中の閉じ籠った空気の中にいるよりはましかな。と、その時はそう思った。
コントロールルームのドアを素通りして、整備室を兼ねているガレージに入る。シャッターを全開にしているガレージは外と全く同じ気温だった。風が、強い。白衣の裾が風でめくれてばたばたと音を立てた。周りにいる整備士はみんなツナギを着ていて、袖をまくって汗をかいている。僕の姿に一応目を止めるけれど、自分の仕事が忙しいらしく声はかけてこない。
そんなみんなの邪魔にならないように道を選びながら、ガレージから外に出た。丁度、滑走路に降り立ってくる彼の機体が見えたので、僕は白衣の前を押さえていた手をのばしてぶんぶん振りまわした。
風で、髪の毛が舞い上がる。横髪が目の上まで覆って視界の邪魔をした。そろそろ髪の毛を切らなきゃいけないなあ、なんて思って邪魔な髪の毛を抑えると、真っ直ぐ先に彼の姿が見えた。
真っ白のパイロットスーツを着たグラハム・エーカー。ヘルメットのバイザーをあげてこちらを見て、すぐにヘルメットをはずした。
走ってくる彼の顔が、驚いている。
「カタギリ、何かあったのか」
こんなところまで迎えに来るのが珍しいから、驚いているのだろう。僕は口を開いて笑いたかったけれど、外気があまりに寒くて余り大きくは開けなかった。冷たい空気を少し吸い込んだだけなのに、歯が痛い。
「おかえり、グラハム」
それでも笑っている顔はなんとか彼に伝わって、グラハムはなんでもないのか、と小さくつぶやく。少し、ほっとしたような顔をして。
「気分転換に出てきただけだよ。どうだった?」
「最高だよ」
片手にヘルメットを持った腕を両手に広げて、彼が満足げに微笑む。嬉しそうなきみを見ると、僕も嬉しい。
一瞬、その広げた腕で抱きしめられるのかと思って、どきどきしてしまった。
どきどきした胸のあたりを思わず押さえて、ここが寒い外だった事を思いだす。
「くしゅん、」
出てきたくしゃみを我慢することができずに、声に出す。次の瞬間、白衣の前を合わせた手と、口元を押さえた手を、同時にグラハムに取られた。グローブをしているきみの手は、だけどとても温かかった。パイロットスーツと同じ素材でできているグローブが、体温で温かくなるなんて聞いたこともないのに。
「…気分転換、じゃないだろう。風邪をひく」
きみはその手で僕の手首を掴んで、そのまま歩きだした。引っ張られた僕は、まるで子供みたいにきみのちからに抗えない。
「ちょ…と、グラハム!痛い」
「その話は中で聞く」
何を言われても自分の意見を頑として曲げない。そんなきみに僕が勝てるわけもなく、引きずられるように連れて行かれる。整備士にその姿をみられて、くすくす笑う声が聞こえてきた。
「グラハム、」
恥ずかしいからその手を離してほしい。そう言おうとしたけれど、言ってもきっと通じないだろうから言葉は途中で止めてしまった。
(グラハムは…あったかいな…)
温かいわけがないその手から、彼の温かさを感じる。熱を感じる。
一人で待っている時は寒かったけど、きみと居るとあったかいよ。どうして、そんな風に思うのかな。きみの熱を、感じるからかな。
ガレージの出入り口で、きみは振り返った。むっとしているような僕の顔を見て、きみは意地悪く微笑む。まるで、ガキ大将みたいに。





>>>
グラハムって体温高そうですよね。寒くなったらあいつのベッドの中に潜り込めばいい。
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